木葉

判決、ふたつの希望の木葉のレビュー・感想・評価

判決、ふたつの希望(2017年製作の映画)
4.0
二人の男のほんの些細な諍いから発展する、レバノンとパレスチナの問題。二人の裁判はメディア、国、大衆を巻き込み、
映画は多角的に切り、解決の糸口を模索する。
パレスチナ人は国を奪われ居場所をなくした歴史があるし、レバノン人は難民を多く受け入れたことにより仕事を失っていたり、国民が犠牲になっていたりする複雑な実情がある。
政治によって分断された感情はヒートアップするしかない。
民族感情、血縁、宗教、歴史から紐解けば、互いが被害者感情を持ち、未だに頭では分かっていても心が追いついていけない
不安定な心情は容易に察することができる。
レバノン右派によるヘイトクライム、過去に行われた虐殺、戦争による癒えない心、
映画は深く掘り下げていく。
互いに同じように他者から傷付けられ、大事な人、ものを奪われた過去を持っていたことを知らされた時に、歩み寄ることは出来る。
しかし問題はそう容易くはないのだ。
植えつけられた固定観念、先入観から誰かを攻撃し、自分が優位に立ちたいがために、自分の負の感情をぶつけてしまう怖さ。どんなに傷付けられた痛みを知っていても人は平気でそれをしてしまう世の中だからこそ怖い。
互いの痛み、傷、過去に寄り添い、思い遣る心さえなければ、‘共存’は難しいのかもしれない。
社会派に留まらず感情裁判の動きを大胆緻密に魅せてくれたのでエンタメ寄りのラストが残念だったが、憎しみや悲しみを乗り越えた先に、民族宗教を超えた人と人の交わり、希望があるのかもしれない。
木葉

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