【人間】
「震災の前にお婆ちゃんが死んでいて良かった。」
3.11を境に人生が変わってしまった人は沢山いる。原発からわずか10キロの距離の実家に住むことができなくなった大学生の大浦が撮った等身大のドキュメンタリー映画。
親友とのかえりみちはここが分岐点だった。そう話す彼女。彼女たちは高校生活も離れ離れになり、文字通り3.11が分岐点となってしまっている。
「被災者であること」その一点でお互いが気を使い本音でぶつかり合うことができなかった家族。父が原発作業員だったことも重なりその心情の複雑さは想像に難くない。
自分の撮影した図、テロップ、過去のビデオ画像と構成自体に特段新しさはないけど、大学生でドキュメンタリー映画を撮る仕事をしたいという大浦の処女作として間違いなく最高の出来だと思う。
この映画が評価されるのは「第三者」としての視点ではなくあくまでホームビデオの延長のような「等身」を映していることにある。大浦家だけじゃなく、付近に住む多くの人間にとっての現実なのだ。
雑草も生え、猪がくるそこは確かに命が息づいている場所で家だって壊れていない(見た目は普通の家だからテレビ中継さえされない)のに「放射能」という眼に見えない的が彼女たちの帰宅を拒む。
いつか帰れるか?はたまた帰ることを諦めるか?
彼女にとっての本当のかえりみちは…
※限定公開中
https://youtu.be/x67WKLIBNbw
2020.5.1