Tラモーン

ムタフカズのTラモーンのレビュー・感想・評価

ムタフカズ(2016年製作の映画)
3.7
お久しぶりの長編はなんだか気になった日仏合作アニメ作品。


犯罪者と浮浪者で溢れるクズの吹き溜まりのような街DMC(ダーク・ミート・シティ)。そこに暮らす真っ黒な見た目のアンジェリーノ(草彅剛)はピザ屋の配達の仕事中に見かけた美少女に目を奪われてトラックと衝突、バイトをクビになる。自宅に帰れば待っているのは親友の頭が燃えるガイコツのヴィンス(柄本時生)とペットのゴキブリたち。そしてたまに遊びに来る鬱陶しいコウモリ野郎のウィリー(満島真之介)。お先真っ暗な街で堕落した日々を過ごしていた彼らだが、突然謎の組織に襲われたことからアンジェリーノの秘められた力が覚醒しだす。


兎にも角にも映像が素晴らしい。アメコミがそのまま動いてるかのようなワイルドさと、日本のアニメらしい(あまり詳しくないですが)繊細な表現のバランスが素敵。

「お金も希望もなくみんなゾンビみたい」な街、DMCの描写がかなり生々しくて、ヒスパニック系やアフリカ系のギャングスタなスラム街そのものともいえる街並みはかなりリアル。
ジャージにタンクトップや、バンダナで顔の下半分を隠したり、三つ編みにしてたり、短パンにハイソックスでベースボールシャツを着てたりとローカルギャングのファッションもとても忠実。

そして銃撃戦やカーチェイスの映像もかなり凝っていて、アニメとはいえハード目なゴア描写を含んだ戦闘シーンはなかなかの見応え。

ストーリーとしてはアメリカの陰謀論を下地にしたようなベタさではありながら、自分はどう生きるべきかというテーマをしっかりと持ち、主人公アンジェリーノのマイノリティの視点からメッセージを強く打ち出した作品ではあったと思う。

何者にもなれなかったアンジェリーノが自分に隠された秘密を知りながら、自分の生きたい人生を選ぶ姿はカッコよかった。

"ここで何もしなかったら正面切って自分と向き合えないだろ"

反逆者として生きた父親の"お前らしく生きなさい"という言葉も、親が子どもに望む最高の幸せではなかろうか。

めちゃくちゃ面白い!とは言えなかったけど、テンポもよくアクション的に見所があるので90分台という尺はありがたい。


敢えて吹き替えで観たけど、草彅剛の吹き替えってこんなもんか??この人もう少し演技できる気がするんだけどな笑。
ルナを演じた上坂すみれはやっぱりさすが声優という感じ。ルナのキャラもだけど、やっぱり声が可愛い。
個人的に嬉しかったのはルチャの戦士たちが本物の格闘家たちで、リーダー格のディアボロの桜庭和志が意外としっかり演技できててよかったな。

たまに観るとやっぱりアニメ作品独特の表現は面白い。
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