荒野の狼

MOST BEAUTIFUL ISLAND モースト・ビューティフル・アイランドの荒野の狼のレビュー・感想・評価

4.5
「事実に着想を得た」との初めのテロップは重要で、監督ご本人の体験がもとになっている。しかし着想を得たのは「事実」だけであって、描きたかったのは、マンハッタンに暮らす彼女の「真実」である。
世間はいつも「真実」なんかより、単に「事実」かどうかにしか関心がない。そんな「事実」などここでは珍しくも何ともない。何度も掛け合ったがどこも映画化してもらえなかったらしい。彼女にこの映画を作らせた理由がそれである。多分NYじゃなくとも、東京住人でも持っているであろう、クソみたいな街だなと思いながらも、ここが最高の場所なんだと思い込みたい気持ち。そしてゴミ屋敷でも住み続けられる心理。このアンビバレントな感情をなんとか映画にできないか。なのに話を聞いてくれなかった事に、腹を立てたんだと思う。これはもう自分で演って自分で撮るしかないと踏んだ。結果、個性的で異色な作品になった。だから映像表現に身の毛もよだつ演出があるが、残酷描写ではないし不可欠シーンだから我慢して見て頂きたい。
ひと仕事終えて、彼女が食べるソフトクリームは、まさにマイ•ニューヨークの味がしただろう。秀逸なエンディングである。
荒野の狼

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