ぴよまろ

モリのいる場所のぴよまろのレビュー・感想・評価

モリのいる場所(2018年製作の映画)
3.7
日本の美術史に名を残す画家の熊谷守一の、晩年のとある一日を描いた物語。日中のほとんどを庭の植物、虫、鳥や猫を眺めて過ごすモリこと熊谷守一と、妻秀子、そしてモリの家に訪れる様々な客人たちによる、普通で豊かな一日。

沖田修一作品らしい、穏やかな日常を描いた作品。山崎努さんと樹木希林さんという、レジェンド級のベテラン役者の演技もあって、たっぷりとした「間」を使った表現が、本作のテーマ的にも合っていて、とても良かったです。終盤まで庭の広さがモリの目線で表現されているので、彼の感じる広大さ(モリにとっての宇宙)を感じる演出もすばらしいです。

次々に来訪する客たちの賑やかさ、そして何より、モリと秀子の長年連れ添った感じが随所に現れて(言葉を交わさなくても、思いがつながっている感)、口数の少ないモリの幸せな日常を演出してくれていました。そして、モリが一番大事にしたいものが、じわじわと語られるのが素敵です。

ただ、タライと池の妖精?宇宙人?は何だったのか。空気感はつながっているものの、ちょっと沖田作品らしくない、悪い意味でのダサさを感じてしまいました。(庭をモリにとっての宇宙、としているのはよいのですが、それにしてもあんな直接的なのは。あとタライは明らかに不要。)

限られた空間をとことんまで突き詰めた芸術家の、何でもないけど豊かな日常でした。
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