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追龍のfieldのネタバレレビュー・内容・結末

追龍(2017年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

輸入盤なので細かい意味合いは公開時に確認するとして、バリー・ウォンやるな!実在した呉錫豪ン・シーホウと雷洛リー・ロック二人を繋ぐ友情を香港ノワールの雰囲気たっぷりに描くクライムドラマかなり見応えがある。

喧嘩スタイルの乱闘や銃撃戦はあるがドニーさんのアクションのキレを封印したドラマ主体で演技で見せようとする気概が感じられる。時には泣き仲間の為に友の為に、貪欲でも義理堅いホウ兄貴の生き様、全てが運命だと今を生きる格好良さが画面からひしひし伝わる。
広東省潮州から来た仲間たちもそう、唖のユー・カンや人情味あるフィリップ・キョンたち義兄弟の絆。ホウの為に、ホウは仲間の為に一蓮托生な四人の根底に流れる絆も痺れるものがある。特にキョンさんの賭け事に狂い、タイで仲間の最期に涙する弱さもある弟分の演技がとても良い。

60年代、香港へやって来た四人は少女や仲間内で貧しくもひしめき合いながら暮らす。食い扶持を稼ぐ為のギャング同士の喧嘩は大人数で迫力があって面白かったが血の気の多いチンピラに対し強引な手法で鎮圧するイギリス人警察官ヘンダーを打ちのめすホウ。逮捕され拘置場での仕返しは典型的なイギリス人像だけど、やはり悪どい。
出鼻を挫くかのように助けてくれたロックに恩義を感じるホウ。親切にしてくれた同郷の警察官は五虎将と呼ばれたフェリックス・ウォン。真っ当なベテラン警察官に生き方を諭されるも仲間の為にドラッグだろうと稼がなくてはいけないホウの性分だな。後先考えずに突っ走ってしまうところはロックと似た所がある。

九龍城のショットと共に流れるダニーハサウェイの曲ゲットーの格好良さ…使われる音楽も良い。犯罪渦巻く九龍でチウ親分のもと、時には力づくでドラッグ稼業に精を出し徐々に力を付けるホウに対し令嬢と婚約し出世街道を歩むロック。
手を拱いていたマフィアを九龍の要塞でどう逮捕するか。警察突入の為のフレアガンを携え少数で乗り込むロックに待ち構える陰謀、対立する警察幹部トン・ガンだけじゃなくマフィアとズブズブで情報なんか筒抜けだったんだろうな。ケント・トンも五虎将だったな、貫禄あり過ぎる。
察知していたホウたちの働きで意識朦朧の中危機を脱したロック、九龍の細かい路地やこの雰囲気ある雑多な街並みのセットも良いが続々と群がる手下たちにホウの緊張感ある立ち回りが良い。
砕かれた足を引きずり杖を持つようになってからホウに風格が出てきた。妻は可哀想だったが怪我の時の看護師ジェーンと第二の人生を歩み、タイの将軍相手の販路拡大や稼ぎ集金の一元化で警察と分配しロック共々、ますます勢いに乗る兄貴。
イギリス人に勝ち目はないと制止を振り切りヤク中の弟に重症を負わせたヘンダーに復讐に向かうホウ、その矢先ニュースによって知る主に贈収賄を取り締まる独立組織ICACの設立にカナダへ逃亡を決意するロック。二人の大きな違いは運命に対する考えだと思うがコントロール出来ない事から逃げずあくまで自分の道を選ぶホウ。
ショベルカーで車ごと持ち上げ香港は俺たちのだ言い放ち、チウ相手に足を引きずりショットガンをぶっ放すドニーさんが勇ましい。
身を呈したローズの正体はナルホドだが、重ねた少女の姿が切ない。ホウを見ながら最期を迎えるユー・カンも良い演技だったな。
戻ってきたロックに危機を脱し意を決した銃弾、暗い香港を背景に佇む二人に濃厚な時間の流れを感じさせる。兄弟愛というか戦友というか、誰かの為に皆生きてる。ロックにとってブレーキ役を果たし最期は庇いながら相討ちになった相棒役のケント・チェンも格好良い…。
連行されドラッグで長期判決を受け末期癌で早期釈放をされるまで、アンディの安定感も勿論だがサブに至るまでそれぞれ特徴があり流れる漢気、俯瞰や背中越しに動きのあるカメラが映しだす街の雰囲気に、生きる人々に痺れた。

繰り返される父の教え「Life or death,riches or poverty. It's all destined.」

「生死は運命が、富は天が決める」

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念願叶ってスクリーンで確認してきた!
日本語字幕で追いやすくなったからか、九龍城砦に移ってからはストーリーが駆け足に感じたな。それでも兄貴とロック、義兄弟たちの演技は熱くフィリップ・キョンは初見で感じた通り人間味のある男だが今回は啞のユー・カンが良く感じた。どこか悲壮感のある良い役どころだと思う。
ローズの最期もグッと来る。そして音楽が良い。

2020年8月8日新宿武蔵野館にて
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