むらむら

追龍のむらむらのレビュー・感想・評価

追龍(2017年製作の映画)
5.0
「男たちの挽歌」と「インファナル・アフェア」と並べられて「どれがどれ?」と内容当てクイズされたら正解する自信がない香港ノワール映画。

1960年に潮州から香港に密航し、アヘンなどの密売で巨万の富を築くホウを演じるのは、ご存知「イップマン」ことドニー・イェン。

ロウは実在の香港マフィア界の大物。「日本で一番悪い奴ら」ならぬ「香港で一番悪い奴」と恐れられた存在で、足を痛めてるという設定も史実に基づくらしい。

悪徳警官ロックも実在の人物。ちなみにアンディ・ラウは、1991年の「リー・ロック伝/大いなる野望」とその続編でもこのロックを演じているらしいので、興味湧いた方は見比べて観ると良いかも。

俺的な見どころは九龍城砦での死闘。1990年に解体された九龍城砦だが、「あー、こんな感じだったんじゃないかなー」って思わせる見事な作り込み。圧巻はその迷宮のような九龍城砦で、無数の上半身裸の男たちに追いかけられるドニー・イェンとアンディ・ラウのシーン。なんか「ホモから逃げ切れたら100万円」というホモAVのことを思い出した(注:未見です)。

ただ、「イップマン」に慣れてる俺としては、ドニー・イェンが拳銃でバンバン人を撃つの、めっちゃ違和感あった。あと、松田優作みたいな髪型も、「イップマン」がズラつけてチンピラのコスプレしてるようにしか思えなかった。

詠春拳を使っちゃったら、イップマンそのものになってしまうので、これはこれで正しいんだろうけどさ。どうしても「イップマン」を拭えない自分もいたりする。さらに、「イップマン」でもポー刑事を演じてたデブのケント・チェンが、この作品でも刑事役で出てくるので輪をかけて混乱する。

とにかく主役二人が非情で、敵には「ホステル」ばりに容赦ない拷問とか仕打ちをやるので「イップマン」の印象を壊したくない人は観ない方がいいかもです。

個人的には、何度「ダメだ」って言われても麻薬に手を出してしまうホウの弟の役は、清水健太郎兄貴に演じて欲しかったかも。清水健太郎兄貴がイップマン師匠に怒られる映画とか、もし実現したら胸アツすぎる……。
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