カラン

ミクロの決死圏のカランのレビュー・感想・評価

ミクロの決死圏(1966年製作の映画)
3.5
物を極小化する技術を開発した東側の科学者をアメリカに亡命させたところ、襲撃を受けて、博士は脳出血で意識不明になる。ミクロのままでいられるのは60分であるが、博士はそれを恒常化する新たな技術を知っているというのが、軍情報部の読み。ミクロ化して潜水艇で人体の旅が始まる。タイムリミットは60分。


冒頭、博士を亡命させる飛行機が夜闇の中で飛行し、着陸するとすぐさま車での移動が始まる。ほとんど説明なしで誰がどこに向かっているのかは分からない。闇の中を光源が過ぎ去っていく一連のスピード感のあるショットは、さすがにかっこいいなと観ていた。が、5分も経たずに心配になってきた。視覚効果以前に、美術が厳しい。コスチュームもメイクも。ラグエル・ウェルチ嬢とか、なんだあのボディは。あんなてかてかに作り込んだ髪型でも滅菌室を通過したから、生理学的な仕組みで無菌になるよう大切に守られている脳の中に入っても、問題なし!みたいな展開になっている。その唯一の目的がお色気というのは、、、まあね、商売として仕方ないのか。

たしかに観ていて『インターステラー』を思い出した。本作の売りの体内は、スピルバーグとトビー・フーパーの『ポルターガイスト』の産道のようなのが多い。つまり、何一つ生体組織に見えない。背景との合成も輪郭線が出てしまっている。窓ガラスのはめ込み合成だけは、スプリットスクリーンの王の面目躍如か。

本作は1966年に公開されて、第39回アカデミー美術賞と視覚効果賞を取った。リチャード・フライシャーは第40回でも『ドリトル先生不思議な旅』で視覚効果賞を受賞した。なお、第41回はスタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』(1968)である。キューブリックが導入した技術が並はずれたレベルであったことが、本作を観るとよく分かる。

「4Kデジタル・トランスファーマスター」採用という宣伝文句のBlu-rayで視聴した。仰々しいが、4Kレベルでスキャンして、2Kに落とし込んだということ。UHDソフトを販売している今どきは、この種のBlu-rayソフトはけっこう多い。配信が幅をきかせているのでUHDは大して売れていないが、4Kマスターを作っておけばUHDはもちろん、データ量を半分にすればBlu-rayができるというコスパを考えた作戦だろうね。この種のネイティブ4Kとダウンコンバートした2Kとでは、実は、画質も音質もけっこう違う。
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