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小公女のmaverickのレビュー・感想・評価

小公女(2017年製作の映画)
3.7
2017年の韓国映画。監督は1985年生まれの新鋭女性監督、チョン・ゴウン。本作で大鐘賞、青龍映画賞、 釜日映画賞の新人監督賞をそれぞれ受賞するという快挙を成し遂げた。


本国での評価はすこぶる高く、フィルマークスでも高評価なので期待していた。だが残念ながら自分には刺さらず。若い女性が就職しにくいという韓国での社会問題が盛り込まれていて、本国ではそうした層に大きな支持を得たのだとか。だが自分はそのテーマを痛烈には感じなかった。どちらかといえばコミカル寄りで、全体的にふわふわした雰囲気。自由人である主人公の行動を、のんびりと眺めるだけでエンドロールを迎えてしまった。鑑賞後に詳しい解説を見て、様々なメッセージ性に「なるほど」と頷けた。それを知った上で鑑賞してみると、評価もまた違ってくるかもしれない。

主人公を演じるのは『愛のタリオ』のイ・ソム。個性的な顔立ちが特徴の可愛らしい女優で、彼女が主演ということで期待もあった。彼女自体に問題はなく、少し風変わりな主人公を自然体で演じていて好感が持てる。その点に関しては鑑賞して良かったと思う。

主人公は煙草と家賃の値上がりで、一気に生活困窮へと陥る。家賃を交渉することは諦め、彼女はアパートを引き払う。学生時代のバンド仲間を頼り、居候先を転々とするのだった。

バンド時代とは環境も大きく変わり、皆それぞれに何かしらの問題を抱えて生活している。大人になっても変わらないのは主人公だけであり、彼女を通してそれぞれの問題が浮かび上がる仕組みになっている。主人公が抱える問題もそうだが、元メンバーが抱える問題も韓国の社会問題を表している。それらは日本人から見てもさほど違わない。こうした部分が生き辛さに繋がっており、改善していかなければならない問題である。

切り口は斬新で、ふんわりとした雰囲気も独特だ。だがそれによって肝心のテーマが薄まっていると感じた。期待通りとはならず残念だ。


新鋭監督が次から次へと生まれる環境も感心するが、近年はその中で女性監督の活躍が目覚ましいことに驚く。本作は自分には刺さらなかったが、野心作であるのは感じた。賞を総なめにするくらいに期待されているのだから、次は大きなバックアップも付くのではなかろうか。次回作が楽しみである。
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