うえびん

アイ・キャン・スピークのうえびんのレビュー・感想・評価

アイ・キャン・スピーク(2017年製作の映画)
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これはダメ、採点不能

2017年 韓国作品

DVDジャケットの“日本では上映不可能と言われた問題作”のフレーズにひかれて視聴。確かに、これは上映不可能だ。映画の作法というものがあるとしたら、明らかに作法を逸しているとしか思えない。

前半は、ハートフルなストーリー、リアルな中にコミカルな演技が面白かったのに、後半の“従軍慰安婦”にまつわる話が出てきてからの強引で予定調和のストーリー展開、セリフ回しは、見続けるのがきつかった。感動的、感傷的な個人的ストーリーに国際政治的なメッセージを織り込むというのはいかがなものか。虚実入り交ぜているのが、更に無作法というか、大人げないというか。とにかく、日本人の描き方が酷すぎる。

本作で取り上げられている史実、2007年のアメリカ下院121号決議についての実際を再確認してみた。

(有馬哲夫『日本人はなぜ自虐的になったのか』)
▶1993年8月4日、いわゆる河野談話が発表されます。これによって、韓国だけでなく、世界中に「日本政府が公式に慰安所に日本軍が関与していたことを認め、正式に謝罪した」というニュースが発信され、それが国際的に認識されることになります。そして、「戦争中、日本軍が朝鮮人女性を強制的、組織的に慰安所に送り込んだ」ということが国際的に確立してしまいました。これは歴史的事実にまったく反するのですが、一度国と国の場で認め、謝罪したことを、あとで取り消すことは、みっともないだけでなく、国際的信用を失う行為です。したがって、「真相究明」によって徐々に事実がわかってきたにもかかわらず、当時の政府はこの誤った認識を取り消すことにあまり積極的ではありませんでした。(中略)

 ようやく2007年3月になって、安倍晋三首相がこれを是正する動きを起こします。同年の1月にカリフォルニア州選出の下院議員のマイク・ホンダが慰安婦に対し謝罪を日本政府に要求する決議案をアメリカの下院に提出したことを受けたものでした。安倍首相は吉田証言(朝日新聞が1992年に報じたもの)に触れながら「強制性を示す客観的な証拠はなかった」「広い意味での強制性はあったが、狭い意味での強制性はなかった」と国会答弁したのです。
 アメリカのワシントン・ポストやニューヨーク・タイムズは首相のこの態度を二枚舌であるとして厳しく批判しました。日本政府がいったん政府見解として出し、国際的に確立した事実とされたもの(1993年8月の河野談話)をあとになって否定するのは誠意をかく態度だというのです。
 アメリカ政府の態度も日本に厳しいものでした。すでに韓国に対して国として謝罪したことを取り消して日韓の間に不和を生むのは好ましくないとして、日本政府に慰安婦についての公式見解を変えないよう求めたのです。(中略)
 結局、安倍首相は同年4月には『ニューズウィーク』の記者に対して、従軍慰安婦について「人間として心から同情する。首相として大変申し訳なく思っている」「彼女たちが慰安婦として存在しなければならなかった状況につき、我々は責任がある」と述べることになりました。(中略)
 その一方で、とくに韓国で、この問題に関して日本を貶める報道がだんだん度を越してきたため、より多くの日本人がこの問題に関心を持つようになり、歴史研究者のほかに評論家やジャーナリストも加わって歴史的事実のチェックをするようになりました。
 これによって朝日新聞の「慰安婦」に関する報道が歴史的事実と相いれないものであることが確認されたため、ついに朝日新聞は「慰安婦」関連記事のなかに誤報があることを認め、一部の記事の訂正をすることになりました。◀

作中では、「いまだに日本からの謝罪はない」と事実に反することが述べられている。

戦争を知らない人、後世の人たちに、事実としての戦争を知らせることは大切だと思う。同じ悲劇を繰り返さないため、多くの人が未来の平和を願えるようになるために。本作には、過去の事実の信憑性が描かれていない。その上に、戦争を知らない人や後世の人たちに、新たな禍根を生み出そうとしているとしか思えず後味の悪い作品でした。
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