ぺむぺる

ダウンレンジのぺむぺるのレビュー・感想・評価

ダウンレンジ(2017年製作の映画)
2.0
あけすけなグロゴア描写に人を選ぶところはあるものの、全体的には手堅い作りのワンシチュエーション・スリラー。ギョッとするような人体損壊は匂い付け程度で(極めて強烈な、匂いだが)、正体不明のスナイパーにいつ何時撃たれるかわからない緊迫感に重きを置いている。開放的なはずの空間で生み出される閉鎖的な状況。明確な主人公の不在は感情移入こそしにくいものの、「次に誰が死ぬかわからない」スリルがあり、うまい仕掛けだと思った。膠着状態に陥るかと思いきやあの手この手で物語を転がすやり方も、実に自然でテンポ良くキマっている。

惜しむらくは、スナイパーの存在感が凶暴なカメラワークや底意地の悪い脚本に完全に負けており、物語の広がりをあまり感じられなかったことだろう。動機はともかく目的ははっきりしているので(遂行の仕方も機械的なほどスムース)、〈理不尽な恐怖〉を駆り立てるにはやや力不足かと。竜巻なりサメなりに襲われる“災厄”に近い印象を持ってしまった。悪趣味であることは承知のうえで、せっかく「敵は人間」を設定したのだから、ガツンとくるようなその者の悪意を覗いてみたかったというのが本音である。個人的には、つながりそうでつながらない、若者たちの人間関係(人間ドラマではなく、誰と誰が知り合いで〜といった設定上の関係性)のほうにゾワゾワしてしまった(笑)。

まぁそんなことは気にせずに、実人生では全力でごめん被りたい一生に一度の災厄、その緊張感と絶望感を、登場人物のひとりになったつもりでシンプルに、ハラハラドキドキ楽しむ作品だろう。
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