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マリア・ブラウンの結婚のペインのレビュー・感想・評価

マリア・ブラウンの結婚(1978年製作の映画)
3.5
ファスビンダーは最初に観た『13回の新月のある年』がかなり胸を打つものがあり、その後『ベロニカ・フォスのあこがれ』『第三世代』を観たが全然ハマらなくていまいち掴みきれない監督であったのだが、本作を観て少し掴めてきたような気がする。

ダグラス・サークを崇拝しているファスビンダーだけれど、やはり決定的にその映画的な“運動神経”に差違があるなとは感じた。芸術点及びエンタメ点共にハイレベルな“引き締まった”作品を連発するサークとは対照的に、ファスビンダーは“良くも悪くも”、決して起用なタイプの作家とは言えず、しかしその不安定さや危うさにこそ魅力があるとも言えなくもない。

本作『マリア・ブラウンの結婚』は結構商業路線に寄った作品のように思えた。雰囲気良くまとまっていてソツはないのだが(※一般受けが特に良いのも頷ける)、『13回の新月のある年』のようなインディ感剥き出しのあの私的なプライベートフィルムと比べるとガツンとくるものはなかった。ただ、ゴダール(※『ウィークエンド』とか)にも通ずるオープニングの暴力的なまでのキレキレぶりには高鳴る胸をおさえきれなかった。

ファスビンダーが、著作『映画は頭を解放する』で、自作TOP10なるものを順位付けしていたのだが、本作は9位と高い一般人気に反して下位だった。かつて庵野秀明が、“世間にウケる(※『シン・ゴジラ』とか)ものよりもウケないものの方が自分は気に入っていたりする”というようなことを言っていたのだが、ファスビンダーにも同じようなことが言えるような気がする。例え不格好な仕上がりであろうと、自分を余すことなく表現出来た作品の方がやはり作家自身は満足なのだろう(※ちなみにゴリゴリのプライベートフィルム『13回の新月のある年に』は2位であった)。

それとたしかに
『ショーガール』や『ブラックブラック』といったヴァーホーヴェン作品にも通底するようなテーマがある←(※勿論描写のストレートさや俗悪みは断然ヴァーホーヴェンが凄い)。
ペイン

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