湯っ子

マリア・ブラウンの結婚の湯っ子のレビュー・感想・評価

マリア・ブラウンの結婚(1978年製作の映画)
4.2
「現実が私に追いついてないのよ」…確かに。
誰もあなたには追いつけません。ひとりで激動の時代を駆け抜けて砕け散ったマリア・ブラウン。

いや〜すごかった。いろんな思いが湧いてきてまとまらないので、そのまま書き留めます。

つい先日「裁かるるジャンヌ」を観た私は、どうしてもマリアにジャンヌが重なった。ジャンヌが「神の声を聞いた」と審問官に主張することと、マリアが「夫を愛しているの」と男たちに囁くこととは似ている気がする。「神」も「愛」も目には見えず手にも取れず、人々の中に個々にあるけれども、個々に違っていて、他者の中にある「神」や「愛」は確かめようがない。

この映画のタイトルをそのまま訳すと「マリア・ブラウンの結婚の日々」なんだそう。「マリア・ブラウンの愛の日々」ではないことが、私にはこの映画のヒントに思えてしまう。

マリアの愛はヘルマンその人ではなくて、「今ここにいない夫」に向けられていた。「不在」がどれだけ大きな影響を持つのかということも、最近考えたこと。

ラストの謎についての勝手な想像は、ネタバレ欄に書きます。
湯っ子

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