ニッポン国 古屋敷村の作品情報・感想・評価

『ニッポン国 古屋敷村』に投稿された感想・評価

Omizu

Omizuの感想・評価

3.8
【1982年キネマ旬報日本映画ベストテン 第5位】
ベルリン国際映画祭フォーラム部門に出品され、国際映画批評家連盟賞を受賞した。『三里塚』シリーズなどで知られる小川紳介のドキュメンタリー作品。3時間半という長尺で古屋敷村の農業、養蚕、炭作りといった生活から戦争体験まで描き出す力作。

とにかく小川紳介は粘り強い。それが映画にも現れている。何か特別なものや人を追うのではなく、普通の暮らしを丁寧に隅々まで追っていく。

情報があまりなかったのだが、古屋敷村は今ではほとんど人は住んでいないようだ。観光地化しようという動きがあったが失敗に終わったようだ。

そこに住む人々の都会とは全く違う暮らしが伺える。都会の人はのんびりした田舎で暮らしたいというような幻想を抱きがちだが、実際に生活するとなると大変そうだ。それは炭作りをみていても分かる。あんな長時間労働は自分にはできない。でも出来上がった炭のカランカランという音が心地よかった。

また後半は戦争に行った人のインタビューも交え、そうした話がメインになってくる。「孫末代までじゃなくて永久に戦争はしてほしくない」と語気強めに語る老人に胸を打たれた。まさしく今戦争している国があるわけで…

あまりにも長い『1000年刻みの日時計 牧野村物語』よりこちらのほうが面白く観ることができた。
浮浪者

浮浪者の感想・評価

3.5
ところどころとんでもないけれど、ところどころどうしようもない。一時系列に納まっていることに驚愕すらしてしまう。稲とシロミナミ、国債とラッパ。
デニロ

デニロの感想・評価

3.5
210分ということで体調を整えつつ出掛ける。何しろ初めて観る作品なのだから。

上映開始後10分も経たぬ頃、これ観たことがある、もしやシロ何とかという靄が出てくるのではあるまいか、と思った数分後にそのシーンが映される。げっ、と思ったのはそこまででその後に写された映像は忘却の彼方で、もはや初めて観る作品です。

蔵王山系にある古屋敷村。明治の終わりには養蚕で村中が潤い、花火が上がっていた。そんなことを語りつつ、いまや寒村となった古屋敷村。農作業をするにも当初は土壌の為か唐辛子も赤くならない有様。徐々に人が増え土壌もこなれてくるのだが数年に一度は冷害で作物はうまく育たない。山の木を利用した炭焼きで糊口を凌ぐ。

炭焼きをしている人を追う。原材料を用意し、焼き窯を作り、炭焼きの作業をする姿を切り取る。その合間にインタビュー。人に使われるより、窯に使われる方がいい。炭焼きは楽しい。この人は、父も兄二人も日本の侵略戦争で亡くしている。おそらく人に使われるとはそうしたことを言っているのではないかと思う。よく言われることだが日本の兵隊は戦闘で亡くなるというよりは、病気、飢えで亡くなる方が多かった。

壮年期兵隊にとられ苦渋を味わい、何のための戦争だったのか、誰のための戦争だったのか、そう悔やむ元兵士がいる。また、ニューギニア帰還兵は、戦争があったこと、行ったこと、忘れないことが供養だと軍隊ラッパを今も手にして吹く。

小さな村からそんな様々な事象、感情が渦巻く。そんなあれこれをおばあさんに語らせる。聞きたいことをあらかじめ用意している風でもなく、相手の言葉が途切れてもそのままにしておく。相手はまた、何か喋らなくちゃいけないのかとでも思うのか語りだす。東北弁の字幕でいささかの境界のあることを知らせる。それにしても何故おばあさんだけなのか。それがこの国の辿ってきた道だから。これがニッポンだ。わたしの国だ。

1982年製作公開。撮影田村正毅。監督小川伸介。

アテネフランセ 没後30年 小川紳介の検証と継承 にて
一

一の感想・評価

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本作の演出について『映画を獲る』の中で監督が語っている部分。「そのときに僕が採った方法は、映画の内容をストーリーもなにもその人にみんな話すんです。(略)できればラッシュも見てもらって。で、その人と一緒に見て、「これでいいですか」「いやあ、あそこうまくないなあ」「もういっぺんしゃべり直しましょう」とか、やっていく。その間に一週間とか二週間かかるわけだけれど、そういう関係をできる限りつづけていくと、いつの間にか相手が心配してくれるのね。(略)むこうの人が動いてくれる、有機的に。フィルムを中心に回りだすんですよ。そこのところが、僕にいわすと、ドキュメンタリーの至福ですね。」「記録映画は事実じゃないんですよ。明らかにそこには「劇」が働いてるんだね。彼女が自分をこう見せたいって「劇」が働くんですよ。これは美しいことですよ。それを覗けるんです。こんな幸せなことはない。」このように3時間半に及ぶ上映時間の後半部を占めるインタビューパートは、実は半ばインサイダーと化した撮影隊(「空気みたい」な存在感でカメラを構える田村正毅)と村人たちとの緊密な共同作業であったのだが、前半部分の驚くほど丁寧な科学的実証パートもまた、加藤幹郎が「重要なことは、その説明(化学反応のイラストレーション)が古屋敷村の田園で不作を経験した農業従事者とスタッフのあいだで、手ずからおこなわれるということにある。」と指摘するように、両者の共同作業であり、だから本作に徹頭徹尾通低するのは、撮影者と被写体の親密な関係性である。何十年という時間が堆積した“おわり街道”を登るその足取りの慎ましさも、炭窯の中で赤々と輝く木片の美しさも、かつて村に上がった花火を回想するその手振りの雄弁さも、貝の化石も、軍服を着て吹き鳴らすラッパの音も、すべてはそれに付随する形でカメラの前に現出した豊かな至福の瞬間なのだ。
自然と対話し、歴史を語る村人たちが神秘的な存在に見えてくる。

周縁をみつめて全体にふれる偉大な試み。
ぷりん

ぷりんの感想・評価

4.4
田村正毅の撮影がすごい。普通インタビューをそのミリ数のレンズで撮るか?身振り手振りで語る村人の呼吸を捉える撮影術。

元々生と死の臭いがする映画だと思うが、40年の歳月がそれを熟成させてしまった。もうこの映画の人物はこの世にいないのだという事実に何とも言えない気持ちになる。
朝から活動してからのこの長尺、終始うつらうつらしながらの鑑賞だったんで映画自体の感想書けるほどしっかり見れてないのだけども、自分が生まれる前の映画の光をスクリーンから浴びながら脳みそは自分の過去にダイブして、亡くなった祖母のことなんか思い出して、あああんなことあったなこんなことあったな、なんてあったことなかったこと思い出したりしていた。

阪本順治『半世界』でも良いなあと思ったが改めて炭作りは映像に映える。大変そうだけど面白そう。やってみたい。
前半の稲作の話はつまんなくはないけど長すぎ。
後半はあざとさも感じるけどかなり面白い。何より登場する人々がみんな素晴らしい顔をしてる。
映画というより記録映像で、特に映画館で「鑑賞」する必要はないという意味では一般的な映画とはジャンルが違う感じ。すごく長いしDVDで家で観るのがちょうど良いね。
もったいないと思うのは、この映画は題名で損してると感じること。
「ニッポン国」みたいな斜に構えた言い方は感じよくないな。悪い意味でサヨク臭がして映画マニアしか観なくなってしまうと思う。
シネヌーヴォでの小川紳介、小川プロ特集上映も終盤に。

数十年ぶりの再会だったけど、改めて「稲の科学」パートと「ラッパその他」パートのコントラストに驚愕しました。

しょっ中映画館で一緒になる(というかそれ以外での彼を知らないし彼も同じなんでしょう)若い友人が、模型にドライアイスのシーンを『水俣曼荼羅』の学者解説シーンに紐付けていて、なるほどなあ! と感心。
くだんの模型のことは『幻の小川紳介ノート』で白石洋子さんが触れておられた。東京の小川プロを畳む折にもまだ残っていたそう。

それにしても私は「ラッパ」にやられました。彼のコルネットの話とか軍服の話とか…。
語る人がいるならその語りはフィルムに定着しなきゃならん、ということで決してカメラを止めずひたすら撮り続ける田村さんと、編集で決してそれを切らない小川さんの確信犯的長回しにほとほと魅せられました。

私にとっての「映画の理想形」の一つの答えかも、みたいなとこですね。
た

たの感想・評価

4.0

このレビューはネタバレを含みます

稲パート、そういうものだとしている事に全て説明ができるんだと感動する
当たり前なんだけど普段あんまり意識しなくて、科学ほんとすごい

良い炭は鋼(だっけ)の音がする みたいな事を言っていたけど本当に転がした音が良い音だった
炭焼き小屋って毎年作らなきゃいけないのなんでだろう もろいから?

ラッパパート、話している時の表情、抑揚、タメ、リズムにエンターテイメントのセンスを感じる人っているよな
いやまあ俺は知らねえけどさ、とかいや俺は本当に思ったねみたいな事を実に思っている様(もちろん本当に思っているだろうけど)に発言できる人とか
青年団(何に?)とか消防団とかラッパ役がいたみたいで昭和初期のラッパの役割がおもしろい
ラッパ以前は何が使われていたんだろう

花火、昔見たのについさっき見たみたいに反応(特に驚き)を再現できる人、手の動きが話の重要な一部の人いるな
何回も話すことによってその驚きを再確認し思い出が強まりまたその強まった思い出に入り込んで驚きを再現できるのか

エンドロールで歌舞伎研究者がいたのはなんだろう、どこで?

戦争経験者、戦争経験してないけど周りに経験者がいた人、そのどっちでもない人それぞれで反戦(特に太平洋戦争をイメージした)に対する感覚ってもう全然違うよな
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