むらむら

アイアン・スカイ ディレクターズカット版のむらむらのレビュー・感想・評価

5.0

全力で全方向に喧嘩を売りに行くスタイル。

1.ナチスが月の裏側に潜伏していた
2.米国女性大統領が人気取りのため黒人宇宙飛行士を月に派遣
3.捕まった黒人宇宙飛行士が「ニグロは劣等人種だ!」と白人にされる
4.ナチスがスターウォーズそっくりの兵器群で地球に進軍
5.北朝鮮が「あの兵器は我が国が製造したニダ」と主張する

そう、こうして全方位で炎上してもおかしくない、こんな中二病のSFファン(俺)の夢を叶えたストーリーの映画がこの「アイアン・スカイ」なのだ。

予算の10%はクラウドファンドらしい。応援したファンたちは、作中に出てくる架空のポスターや、ラジオのガヤ音声で参加。これこそが、本来のクラファンの姿。コロナを利用して自分の利益だけは確保しようとする日本のエセクラウドファンディング共は、本気でこの作品に出てくるちょっと抜けたとこのあるナチ共に殲滅されてほしいと思う。

他にも「ヒトラー 最期の12日間」や、アップルの有名な独裁者CM、キューブリックの名作などもパロディされてるし、某映画が、物語の展開のキーになっていたりと、風刺コメディとして、とってもよく考えられた作品だと思う。世間の評価は低いみたいだが、俺は断固支持する。

全編においてインダストリアル・テクノ業界の古参ユニット、ライバッハが音楽を提供しているのもポイント。見事にこの映画の世界観とハンマービートが調和している。Nitzer EbbやDAFの来日公演を観たときのことを思い出した。あああ、この感想を書いてるだけで、無機質な反復ビートに浸りたくなり、体が熱く火照ってくる。

反復ついでに繰り返しになるが、冒頭に書いたように、狂犬の如く各方面に噛み付いていくアグレッシブな内容に、心から賛辞を送りたい。たった2時間の映画で、チェッカーズかよ、ってくらい周りを傷つけまくってるので、俺が人権団体だったら、冒頭5分観ただけで配信停止に追い込む自信ある。

人権団体が「風と共に去りぬ」に気を取られている間に、観るなら今のうちだと思います!
むらむら

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