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ファウストのandesのレビュー・感想・評価

ファウスト(1994年製作の映画)
3.8
チープながら悪夢のようなイマジネーションの発露はシュヴァンクマイエルならでは。相変わらず飯がちっとも美味そうに見えない。気持ち悪い描写が多いが、実はユーモアもかなりあるので、そこを楽しめれば印象も変わるかもしれない。
物語は劇中劇と入れ子構造になっており、明確な説明もなくセリフも少ないので不明確である。その現実と虚構の境目が曖昧なのが悪夢的。相変わらずストップモーションは冴えており、カッコいとすら思う。
道化師が悪魔を呼び寄せる呪文と退散させる呪文を繰り返すくだりは笑った。悪魔と契約するファウストのペンのくだりも繰り返され、所謂「天丼」である。その他、テーブルからワインなど黒いユーモアもそこらじゅうにある。ブラックコメディと言ってもいい。
結局、傲慢な人間はバッドエンドにおわる。感情や受け答えにおいて、悪魔の方が「人間臭い」のは面白い。さて、魂を売ってまで得たかった力は、果たして価値に見合ったものなのか。浮浪者が“足”を持っていたことから、まだまだ契約する人間はいるだろうね。
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