チッコーネ

ポーズ!~マドンナのバックダンサーたち~のチッコーネのレビュー・感想・評価

3.7
『イン・ベッド・ウィズ・マドンナ』は「素晴らしいドキュメンタリー映画であると同時に、ゲイ映画である」というのが持論だったのだが、やはり世界中には同じようなことを考えた人が多かったのだと再確認。

ストリートから突如、世界の檜舞台へ躍り出た当時のバックダンサーたちの「ちょづきぶり」はすさまじく「絶対、友達にはなりたくないな~」と思ったものだが、ああしたアティチュードが欧米ゲイのひとつのスタンダードであることに、間違いはない。その後マドンナと訴訟沙汰になったという話は知っていたが、お決まりの転落物語には「やっぱりか…」と充分納得できるものがあった。ホセは昨年、二丁目で行われたイベントに来日していたし、裏方でも大きな仕事をしているのだろうと思っていたのだが…。

しかしツアーダンサーとしてのキャリアを築いたケヴィン以外も、講師などの仕事を得て、細々とでも踊り続けているというのは、やはり嬉しい。過去や現在の心象を、彼らが最も得意とするダンスで表現させた場面があるのは素晴らしかった。

またHIV/AIDSが非常に危険な病気であった1980年代半ばの感染にも関わらず、ふたりのダンサーがしっかりと生き延びている姿が、映し出されている。加齢以外に容姿の衰えが感じられないのは、医学の進歩の賜物であろう(むしろネガティヴ陣のほうが、劣化していた)。

やはり彼らは、あらゆる意味で先駆的な存在だったのだ。自らの傷を隠しながら、マドンナと共にポジティヴなメッセージを発信してくれたその功績に、心から拍手を送りたい。