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負け犬の美学のoggyのネタバレレビュー・内容・結末

負け犬の美学(2017年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

50戦近く戦って、勝ちは10数戦。最後の勝利は3年前。チャンプは、3年も勝てないなんて俺なら辞めていると言った。そんな才能を持たないスティーブが、それでもボクサーを続けていたのは、ボクシングが好きだから。お前の武器はなんだと問われ、打たれ強さだと答えると、それは武器にならないと一蹴される。だけど、スティーブは反論する。打たれ強さがあったから、ここまで続けてこれたんだと。
それは、まごうことなき才能だ。

そして、彼を動かすもう一つのものが、家族。この家族の描写は本当によかった!対立するシーンもいくつかあるが、いつだって、各々が各々を尊重し、愛していることが伝わってくる。また、ボクサーとしてのスティーブは淡々としているが、家族と共にいるスティーブは感情豊かなところもとても良い。

最後の試合は、彼の理想のボクシング、チャンプの、勝者のボクシングだった。もっとも、相手をノックダウンさせる場面も、判定負けになる場面もいまいちしっくりこないと思っていたが、ああ、そう終わらせるかと思った。「今日は勝てた?」という娘からのお決まりの問いに、いつもは惜しかったと答えていた。それが、今日は、笑顔で応える。特別な勝利ではなく、今まで通りの彼らで、ただ、スティーブの努力が実を結んだということ。

また、エンドロールでもう一度グッときた。

全体を通して、派手なやり取りは少なく、チャンプやトレーナーとの会話は言葉足らずな印象も受けた。だが、だからこそ、リアルに写る。観終わった直後はちょっと分かりにくいと思っていたが、こうして感想を整理していると、印象深いシーンがどんどん蘇ってくる。良い映画でした。
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