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僕の帰る場所のmのレビュー・感想・評価

僕の帰る場所(2017年製作の映画)
4.8
東京国際映画祭 アジアの未来部門にて鑑賞。

日本で暮らすミャンマー人家族の物語。
難民申請がなかなか降りない事に苦悩しつつも、母国の情勢の不安定さを考えて日本で踏ん張ろうとする夫。夫がいつ収監されるか分からないというストレスで病んでいく妻。幼いながらに両親を気遣う長男、無邪気な次男。
夫視点で東京を舞台にした前半から、やがて視点は長男に移り舞台はミャンマーへ。

主役一家を演じる人々は皆演技未経験の言わば素人だが、とてもそうとは思えない程自然に、そしてエモーショナルに映画の中で生きていて、彼らの存在がこの映画を特別なものにしている(特に長男のカウン君が素晴らしい!)。
彼らが映画の中で生きる姿を躍動的に追う撮影、膨大な撮影素材をタイトにきっちりとまとめ上げた編集も良い。

重く窮屈な東京パートも良いが、長男メインのミャンマーパートになってから映画は俄然輝き出す。
両親にはミャンマー人としてのアイデンティティがあるが、子供達は日本で育ってきたので彼らのアイデンティティは日本にある。その事が家族の中で葛藤を生んでいく。
長男の視点から見たミャンマーの風景のカオスさと新鮮さに目を奪われた。

否応無しに移民問題と向き合っていかざるをえないこれからの時代に、『武装難民』などという分かりやすいワードで難民達を括る事なく、こうして彼ら個人の私達となんら変わりない家族の心の揺れ動きを見つめる作品には大きな価値がある。
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