糸くず

殺人の権利の糸くずのレビュー・感想・評価

殺人の権利(2017年製作の映画)
2.8
第30回東京国際映画祭にて。

題材の重さと今においての意味の大きさ、「何としてでも伝えたい」という意思の強さ・熱さは感じるものの、演出力と脚本の出来がそれに追いついておらず、拙さばかりが印象に残る。

役者の素人らしさはいいとしても、キャラクターの彫り込みが雑で、緊迫感が削がれている。特に政府軍の大卒の中尉は支離滅裂な行動ばかりで、「先住民に理解のあるインテリ」として一貫して描けばいいのに、残虐な行為をあっさりと肯定するので、すごく戸惑ってしまった。物語の展開も「次に行きますよ」という段取りの感じが見え見えで、自然な流れとは程遠い。

善も悪も全てを包み込むような雄大な自然の風景、ブリランテ・メンドーサのような手持ちカメラの荒っぽさとは違う流麗なカメラワークなど見所もあるだけに、惜しい。題材がまさに「今」のものであることだけでは、映画は成立しない。
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