misty

ドルフィン・マン~ジャック・マイヨール、蒼く深い海へのmistyのレビュー・感想・評価

3.7
唯一無二のダイバー、ジャック・マイヨールの生涯をたどりながら、人間と海の繋がりを見る。理由もなく海に惹かれるこの気持ちの理由。海の果てではすべての輪郭が溶ける。それは母の体に戻るということかもしれない、肉体も心も何もなくただ「海」になれる瞬間を求めて人は潜る。

マイヨールが上海生まれで日本とも縁が深くて日本人の友人も多かったことは知らなかった、そもそも知らないことだらけだった。『グラン・ブルー』ですら彼の全てを表現したわけじゃない、そして『グラン・ブルー』が彼にもたらしたものを思うと悲しくもある。この人はただ海そのものを愛した人だった。

海の果てにある完璧な静寂は命を差し出してでも触れてみたいもの。マイヨールと関わった多くのダイバーたちの言葉、娘と息子の言葉。あなたの楽園はここにはなかったかもしれない、けれどこの世界の海には今でもあなたがいて、人が海を求める気持ちの一端は確かにあなたが解き明かしたのよと言いたい。

この映画を観て、少女だった頃わたしは今よりずっとスピリチュアルなものに傾倒する子であったこと、その最たるイメージが海とイルカという生き物であったこと、だからこそ『グラン・ブルー』を観たのだということを今更思い出した。マイヨールの生涯と一緒に、わたしは少女の自分のことも見ていた。
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