木葉

田園の守り人たちの木葉のレビュー・感想・評価

田園の守り人たち(2017年製作の映画)
4.4
抑制という美徳が貫かれた気高い戦争映画。
ミレーの絵画を観続けてるようで、心地よく、ミシェルルグランの奏でる旋律も絶妙な品格あるフランス映画。
舞台は世界第一次大戦、戦場を殆ど描かず、フランスの広大な田園を耕し、男たちの帰りを待ち続けながら労働する女主人ナタリーバイとその娘ローラスメット、奉公女で流れ者の瑞々しいイリーブリーのそれぞれが放つ溢れんばかりの美意識の高さ。
広大な美しい田園を守る女主人ナタリーバイには戦地に行った二人の息子と、共に働く一人娘の夫も戦地に赴いている。
戦争が早く終わって欲しい気持ちと、息子たちが帰る場所、故郷を死守しようとするナタリーバイの威厳や風格、息子を失った深い哀しみを淡々と丹念に。
この一家を息づかせたイリーブリーの可愛らしさ、純粋さ、一生懸命さだけではなく後に、ひどい仕打ちを受けようとも、
シングルマザーになろうとも気高く生きていこうとする姿が胸を打つ。
映画は反戦を謳ってない。
戦争の本当の苦しみは戦地に赴いた者しかわからないのかもしれないが、待つ側の女性たちの苦しみも計り知れないことは容易に想像出来る。
出口の見えない日常の中で何を見出して生きればいいのかふと考えてしまうが、イリーブリーの活き活きとした表情に勇気を貰うだろう。
静謐で厳かでうっとりして思わず溜息が出た。
木葉

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