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田園の守り人たちのakrutmのレビュー・感想・評価

田園の守り人たち(2017年製作の映画)
4.7
第一次世界大戦下のフランス田舎街における、夫や息子を戦地に送り出した女性たちの苦悩や対立を描いた、エルネスト・ペロションの同名小説を原作とする、グザビエ・ボーボワ監督のヒューマンドラマ映画。本作を製作するにあたってグザビエ・ボーボワ監督が思い浮かべたのは、同じく戦場を描かない戦時下の映画としてジャック・ドゥミの『シェルブールの雨傘』だそうである。それだからかは知らないが、本作で音楽を担当しているのはミシェル・ルグランである。

本映画はかなりの良作である。ミレーの農民画に出てくるような映像が強調されて宣伝されたこともあり、観る前は内容的に静かな感じの映画なのかと思っていて、前半のゆっくりとした展開はそんな感じだった。人によっては、やや退屈に感じるかもしれない。しかし、後半に入ると、登場人物たちの想いが交錯しながら、物語が一気に「静」から「動」へと展開していくので、十分に楽しむことができる。

中心人物の3人の女性を演じた女優たちの演技が、本映画をこれだけの珠玉の作品にしていると言っても過言ではない。初共演を果たした実の親子であるナタリー・バイとローラ・スメットの演技はもちろん素晴らしい。個人的には、ローラ・スメットのやや荒んだ感じの、でも意思の強い女性の演技が好きである。しかしなんと言っても、本作で一番輝いているのは、本作でデビューしたイリス・ブリー(本作のキャスティング・ディレクターに偶然スカウトされたそう)である。従順さとともに、妖しさや得体のしれなさも感じさせる彼女の表情が魅力的で、それがフランシーヌの役にとてもマッチしている。ナタリー・バイとローラ・スメット親子が表の主役だとすれば、実は彼女は裏の主役と言える。というか、ラストに進むにつれて表の主役にもなっていくのである。ラストシーンの、バーで歌いながらジョルジュに対して堂々とした視線を投げるフランシーヌ(このときに歌っている曲の歌詞も意味深い)を見ていると、大物新人が出たなあと思う。

最後に、アメリカ兵に対するイメージはいつもこんななのかと思ってしまう。助けに来てくれている見方なのに…まあ、わからなくもないけど。
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