けーすけ

詩人の恋のけーすけのレビュー・感想・評価

詩人の恋(2017年製作の映画)
3.2
2020/11/3(火) cocoの特別オンライン試写で鑑賞。https://coco.to/

済州島で暮らすヒョン・テッキは売れない詩人として、妻のガンスンに支えられ日々過ごしていた。子供を欲しがる妻が妊活を始めた頃にテッキは自身が乏精子症と診断される。男としての尊厳まで傷つけられた時、近所にできたドーナツ店で働く青年のセユンが店のトイレで女性と抱き合っている所を目撃してしまった。テッキは女性ではなく、青年に興奮を覚えた事で自分の新たな感情を知ってしまう事に・・・








てっきり売れない物書きが美少女に分不相応な恋をして、、、的なストーリーかと思ってたら全然違った。
既婚で肥満気味な“売れない、さえない、甲斐性なし”の三拍子そろった詩人のテッキが主人公。


ドーナツ店で働く美青年は酒癖が悪いながらも病気の父親の看病をしつつ必死に日々を生きていて、テッキはそんな彼に何かをしてあげたいと近づく。それは同情なのか恋心なのか、それとも、、、自分の気持ちを確かめるように。

青年セユンはテッキが親切にしてくれる事はありがたいが、同情心から哀れまれているのでは、と訝しがる。

妻のガンスンもテッキの変化を見逃さず、彼が浮気をしていると疑い出す…。


序盤はコミカルな描写を入れて物語が進みますが、テッキの気持ちが走り出してからは少し重め。とはいえ、三角関係というほどドロドロした内容ではなく、性的な描写もなし。LGBTQ的な投げかけでもなく、ひたすらにテッキの不器用だけども真っすぐな愛情表現が映し出されておりました。

ロケ地である済州島の港や街中の風景が、美しくも雑多な部分を持ち合わせており、映画の詩的な部分を引き立てており見どころの一つ。




テッキ役のヤン・イクチュンのとぼけた感じが最高にハマり役。大仰ではなく静かに抑えた演技、繊細な雰囲気がとても素敵だった。

妻・ガンスン役のチョン・ヘジンも気が強く頼りになる女房キャラを熱演。「今日はあの日」といって旦那に跨る姿が笑えるけど、どこか妖艶でもあった。

美青年のセユンを演じたチョン・ガラム。キリっとした顔立ちがかっこいい。日本でもそのイケメンぶりから最近人気が出ているようですが、本作は韓国での公開は2017年であり、今より少し幼い雰囲気が見られるかと。



三者の思いが交錯し、行き着いた結末は切なくもどこか温かい気持ちになれる映画でした。


[2020-166]
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