【第54回金馬奨 新人監督賞他全5部門受賞】
自身の短編『大佛』(2014)を長編化した作品。長編デビュー作にも関わらず台北映画祭グランプリ他6冠を達成、国内のみならずトロント映画祭でも受賞するなど世界的に評価された。
めちゃくちゃ面白かった!鮮やかな演出手腕と技巧の凝らされた映像は新人離れしている。これは高く評価されるはずだ。
最底辺で生きるツァイプー、ドゥーツァイは、あるとき芸術家、事業家として成功しているチーウェンの秘密を知ってしまう・・・
予想のつかないストーリー、白黒とカラーを使い分ける映像センス、ブラックユーモアたっぷりのセリフ、皮肉交じりのナレーション・・・全てがハイレベルで見事に組み合わさっている。
「南無阿弥陀仏」の悪口バトル、カツラぶらんぶらんしながらの○○シーンなど分かりやすいギャグシーンのみならず、そもそものキャラ設定が秀逸でオフビートな笑いを誘う。まるでお笑いコンビのようなツァイプーとドゥーツァイが面白い。ドゥーツァイは普段は大人しいのにツァイプーの前だと横柄っていうのもリアル。
歴然とした社会格差や形式主義に陥った宗教をブラックに消化しているのがまあ見事。
音楽の使い方がよかった。ちょうどいい。重くなりすぎない絶妙な爽やかさを保っている。
最後に聞こえた音は何か。因果応報・・・なのか?という含みのある終わり方が怖くもおかしい。
「シャカ」と呼ばれている人物がとりわけ印象に残った。そこまで分量がないのに要所要所でしっかりいる。無口で朴訥、なのにがっつりタトゥーというアンバランスさが奇妙。彼こそがその名の通りこの世を見守る「釈迦」なのか。
『ひとつの太陽』チョン・モンホンがプロデュースだけじゃなく撮影もしているのか。ますますチョン・モンホンが好きになったし、この監督の才能にも脱帽。ブラックコメディとしてハイレベルにある良作!