なっすん

怪怪怪怪物!のなっすんのレビュー・感想・評価

怪怪怪怪物!(2017年製作の映画)
4.2
―この世に善人はいない。
        みんな悪人だ―


【あらすじ】
いじめられっ子のリンシューエイは、濡れ衣のクラス費泥棒の罰として、老人ホームへのボランティアを命ぜられる。そこに、いじめっ子でクラスの中心人物でもある3人も同行させられる。
ボランティアの最中に人肉を食らう2匹の怪物を見つけてしまった4人は色々あって“妹”の方を誘拐することになる。
「君を逃がしたら僕が殺されるんだ」
いじめの対象が怪物へ向けられている間は仲間でいられる。その葛藤に苦悩しながら主人公はいじめっ子と共にいたぶり始める。そして妹を誘拐された“姉”もまた、黙っているはずがなかった――


◆◆◆◆


なかなかの怪作である台湾ホラー。
報告老師!怪怪怪怪物!
これ洋題が「mon mon mon monsters」ってかわいい。また予告編がおしゃれというか、ホラーってドロドロした音楽にあわせて狂気じみたシーンがいくつも並ぶものがおおいが、これはテクノミュージックとロックな音楽に合わせて人間界の“怪物”であるクソガキたちが胸糞に舞うというぶっとんだ予告内容。これはこれで物凄く興味のわく出来です。
因みに、TSUTAYAもGEOもDVDが置いていなくて、すがりついたのはU-NEXT。31日無料トライアルの見放題にあります。是非。

胸糞!胸糞!と言われている作品だが、個人的には胸糞を通り越し、スカッとするほど登場人物全員が悪人に振り切っていた。
冒頭で怪物の姉妹が人肉を食べるシーンがあるが、心臓(?)を妹に与えているシーンはグロさよりも微笑ましさを強く感じれるという不思議な感覚。
怪物でさえも意思があり愛があり生きているんだと感じるシーン。そんな怪物へ、ただの学生が面白半分で拷問を始めてしまう。しかも敢えて力の弱い“妹”の怪物を捉えて拷問させるあたり、人間のみにくさが十二分に表現されている。

老人ホームで認知症の老人に対してからかう辺りも、日本の作品ではコンプライアンスに引っ掛かるような悪の所業であるが、傷つけないあたりは遊びの範疇。しかし怪物が相手となれば話は別だ!といわんばかりに、倫理的境界線は少しずつブレ始める。

「善人になりたがるだけで勇気もない」
リンはその言葉を叩きつけられて火がついたのでしょう。怪物・仲間・クラスメート・先生、その誰もが善人ではないことを実感したのちに、最後の勇気を振り絞って行動を起こす。その印象的に締めくられるラストは洒落ている。そして流れる主題歌もまたかっこいい。

―安心しろ
お前を殴れるのは俺だけだ
他のやつは許さない――

この歪んだ友情もまた好き。
なっすん

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