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忘れじの面影のCinemanのレビュー・感想・評価

忘れじの面影(1948年製作の映画)
3.0
『忘れじの面影』
マックス・オフェルス監督
1948年アメリカ
2023年3月31日視聴 u-next

10代の少女から30代までを見事に演じたアカデミー女優ジョーン・フォンテインと、鼻持ちならないプレイボーイをイケメンのルイ・ジュールダンが演じている恋愛(純愛)映画です。

今観るとちょっと古すぎてこの直球ぶりが恥ずかしいのですが、
1900年頃のウィーンにあった螺旋階段のあるアパートが素敵で、
時代の香りを存分に味あわせてくれる素敵な作品です。

【Story】
1900年頃のウィーン。
若い頃には天才ピアニストとして持てはやされていたが今や忘れかけているシュテファン・ブラント(ルイ・ジュールダン)は決闘を挑まれていました。
相手が射撃の名手だということもあり、馬鹿馬鹿しい俺は決闘などしない、1時間後にタクシーが来るから必要な荷物を至急準備してくれと執事に命じます。

執事が一通の手紙をシュテファンに手渡しました。

コニャックとコーヒーを淹れてくれと執事に命じて部屋に入ったシュテファンはリザ・ベルンドル(ジョーン・フォンテーン)という女性からの手紙を面倒くさそうに読み始めました。

この手紙を読んでいる頃には私は死んでいるでしょう
すべてお伝えしたいのですが時間がありません
届くのかどうかも分かりません
力をふりしぼりこの手紙を書きます
書いていくうちに明らかになるでしょう私達の間に本当に何があったのかが
手紙が届けば思い出せるでしょう
私が誰だったかを
人間には誕生日が二つあります
生まれた日と人生が動き始めた日


手紙の差出人リザは少女時代にウィーンで母親と二人でアパートに暮らしていました。
ある春の日リザが学校から戻るとアパートの前に引っ越しの車が止まていて次々と素敵な家具がアパートに運び込まれていました。

リザは持ち主が誰なのか興味がわきました。
引っ越してきたのはピアニストと優しそうな唖者の執事。
その日からリザは自室でピアニストが練習する美しい音に耳を傾けるようになりました。
ある日アパートのらせん階段を下りてきたピアニストのためにリザは玄関のドアを開けてあげました。
リザがシュテファンと初めて目が合った日です。
生まれてはじめて内気なリザはシュテファンに恋をしました。
ところがある日母は再婚相手の住むリンツにリザを連れて引っ越しました。

18歳になったリザはウィーンに戻って1人暮らしを始め、
ピアニストとして成功したシュテファンと再会します。
シュテファンはリザのことを覚えていませんでしたが彼女に興味を持ちます。
二人が一晩すごしたのちシュテファンは2週間の予定でミラノに旅立ちました。
すぐに返って来るからとシュテファン言いましたが帰っては来ませんでした。
リザは妊娠して男の子を産んだのち裕福な貴族ヨハン・シュタウファー(マルセル・ジュルネ)と結婚しました。


物語はここから山場を迎えます。
手紙はリザが死んだのちに病院から送られてきました。
唖の召使ジョン(アート・スミス)はリザを覚えていましたがプレイボーイのシュテファンはまったくリザのことを思い出しません。
しかし手紙を読み終わったシュテファンは夜逃げを思い直してヨハンとの決闘に向かいました。

ええ話やの〜。
なのですがちょっとこの純愛は今となっては古めかしすぎるんじゃないの?
と汚れちまった大人、もとい老人は思ったので☆☆☆なんです。
世が世なら☆☆☆☆です。
1900年代のウィーンのアパートをモノクロで再現した画面の美しいことこの上ない作品です。

【Trivia & Topics】
*原作について。
1992年オーストリアの作家シュテファン・ツヴァイクの書いた中編小説『未知の女の手紙』の映画化です。主演のジョーン・フォンテインとその夫で元ユニバーサルのウィリアム・ドジャーが設立したランパート・プロダクションの第1作です。

*ジョーン・フォンテイン。
1917年にイギリス人の両親の間で日本に生まれ、1919年にカリフォルニアに移住しました。
1941年にヒッチコック監督作品の『断崖』でアカデミー主演女優賞を受賞したヒッチコック監督作品でアカデミー賞を獲得したただ一人の俳優です。
姉のデ・ハヴィランドも『遥かなる我が子』(1946年)と『女相続人』(1949年)でアカデミー主演女優賞を受賞。2013年現在唯一の主演賞を獲得した兄弟姉妹です。

*日本サッカーの父。
フォンテインの父親のウォルター・オーガスタ・デ・ハヴィランドは英語教師のかたわら全国でサッカーの指導にあたり函館や金沢では日本サッカーの父と呼ばれています。

【5 star rating】
☆☆☆
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