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リズと青い鳥のtjrのレビュー・感想・評価

リズと青い鳥(2018年製作の映画)
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「響け!ユーフォニアム」ではシリーズ演出だった山田尚子が監督にまわり、個人的に大好きな吉田玲子が脚本を務めた本作。
バイアス無しで傑作すぎて震えた。

オープニングシークエンスで2人並んで部室へ向かう動きだけで、歩幅や肩の揺れ方による人物像の対比を完璧に描写する表現力はさすが京都アニメーション。
ずっと後ろから見続けていたポニーテール
をここまで印象的に描けるのも凄い。

そもそもアニメシリーズとしてえげつない完成度だった本家「響け!ユーフォニアム」、その助演2人のスピンオフで、しかも彼女らが3年次のコンクール前という非常に限られた時間だけを描きながら、ここまで繊細で美しい作品になろうとは。
自由曲「リズと青い鳥」のストーリーを水彩画タッチで表現し、そこに希美とみぞれ2人の関係性の変化を重ね、集大成のソロパートで根こそぎ感情を揺さぶる構成はずるい。
吹奏楽演奏の表現力の違いだけでここまで泣かされるとは思わなかった。

もちろん声優の力量も素晴らしかった。
圧倒的陽キャとして抜きん出た才能の東山奈央と、アーニャの声優とは思えない淡い繊細な演技の種崎敦美の掛け合いは感情がノイズなく染み込んでくる。

これでたった90分なのが本当に信じられない。

【2024/05/12 再鑑賞】
畳みかけ、積み重ねる感動が「響け!ユーフォニアム」の魅力ならば、今作のそれは“引き算の美学”だろう。
熱血スポ根ストーリーである本編の中で、最も大人しく引っ込み思案な鎧塚みぞれを主演に抜擢してくれたという事実だけで涙が出てくる。
この、本編と正反対な今作がそのまま、みぞれと希美の対比に繋がる。

本編とは監督、脚本、総作監、音楽まで別スタッフとなり、繊細で美しい世界観がとにかく美しい。
キャラクターも写実的な等身や長いスカート丈、反射を抑えたマットな画風なのもgood。

詳しくはWikipediaに譲るが、勢いではなく緻密に計算されたコンセプトの元で製作されたことが観ただけで分かる、とてつもない完成度だった。

鎧塚みぞれの“鎧”を、その“剣”で切り崩していく剣崎梨々香がとてもカッコよかった。
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