ベイビー

リズと青い鳥のベイビーのレビュー・感想・評価

リズと青い鳥(2018年製作の映画)
4.1
今作は2015年にTV放映された、京都アニメーションが制作の「響け!ユーフォニアム」のスピンオフ作品。

TV版本編では石原立也氏が監督を花田十輝氏が脚本を務められましたが、今作は「けいおん」や「聲の形」でもタッグを組まれていた、山田尚子監督の演出と吉田玲子さんの脚本で、高校三年生になった鎧塚みぞれと傘木希美の友情を描いています。

僕が京アニ作品を好きな理由は、作画の美しさはもちろんのことですが、どの作品も登場人物のキャラクター設定が一人ずつ丁寧に描かれているからです。作画一枚一枚の丁寧さやリアルに作り込まれたキャラクター像の中に、作家さんたちが作品やキャラクターたちに込めた愛情が深く感じられるのです。

京アニ作品はキャラクターたちの歴史というか、登場人物一人一人にちゃんとした人生が見られるんですよね。本当に登場人物たちがそこに生きているかのようなリアルさで丁寧に描かれていて、そうやってしっかりとキャラクターを作り上げたうえでストーリーラインと並走させているから、絡み合う複雑な心理描写の中で、現実的な群像ドラマが生み出されるのだと思います。

本作もそれが充分に感じられる作品でした。作画も優しいタッチで終始美しく、山田尚子監督の真骨頂でもある、主人公二人を中心とした登場人物たちの心理を繊細に描く演出は健在で、アニメだからと言って現実から離れるようなドラマ性や過度な演出は一切なく、あくまでもありふれた日常を忠実に描き、何気ない会話や仕草を使って彼女らの感情を表そうとしています。

友情、青春、憂い、想い…

クライマックスになるに連れ「リズと青い鳥」という楽曲の背景にある物語が、みぞれと希美に重なって行きます。二人の感情がそのまま音となり、音楽になり、気持ちを乗せた旋律は、言葉以上に相手の心を響かせるのです。

この作品の良さを知るには「響け!ユーフォニアム」の第一期、第二期を観ることをおすすめします。そのあとに今作を観て、次に劇場版を観ていただくと、このシリーズの虜になること間違いなしだと思います。

そして2024年にはいよいよ最終章となる第三期がスタート予定。今年8月にはこれまでの物語と新章を繋げる中編が劇場公開されるなど、ファンとって嬉しい情報がちらほら聞こえてきます。

今からとても楽しみです。
ベイビー

ベイビー