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リズと青い鳥のますのネタバレレビュー・内容・結末

リズと青い鳥(2018年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

これは「演出が上手い」の一言に尽きるな〜。光と音、キャラの動作と表情、その他色々なものに明確に意味を込めていて、それらがスーッと入ってくるので大変気持ちがいい。特にラストのオーボエソロにとても説得力があって、音楽への強いこだわりを感じられた。

しかし、みぞれが重い…。重すぎる。気持ちを理解できないことはないが、ずっと「希美はえらいのに好かれちまって可哀想だな…」という気持ちになってしまった。(希美も希美で狡いところがあるとはいえ。)
たまこラブストーリーのもち蔵やみどりといい、京アニの「好きになる側」は結構ナチュラルに気持ちが重過ぎてまあまあヤバいよな…一歩間違えたらストーカー化しそう…というか「思春期ゆえの鬱屈はあるが最終的には清らかな物語」の域をちょっと出てしまってるよな…と感じる。(あえてなのか…?)
また「リズと青い鳥」の物語は、2人の複雑な立場に重ねようとした結果、やや納得のいかない物語になってしまっているなと感じた。
--追記--
なんとなくわかった。リズと青い鳥のあれを「愛」として描いているから違和感があるんだ。互いに大変一方的で幼いエゴなのに、まるで「相手を思っているから自分の気持ちを押し殺し相手を自由にする道を選ぶ=愛」みたいに描いているから、いやそれは違うでしょ、となってしまう。
自己犠牲は愛の本質ではないのだけれど、山田尚子作品は愛についてそういう解釈をしてしまっているから違和感が残るのだな。合わないわけだ。大変自傷的で感傷的。日本人っぽいとも言える。

いや…しかし「幼稚ながらも愛の芽生える瞬間」と考えれば綺麗になるのかもな。ずっと一緒にいたい(&音楽で負けたくない)というエゴを互いのために手放すことで、初めて一歩愛に近づく。その子供ならではの未熟な愛の片鱗に尊さを見出してると考えると、まあ飲み込めないことはない。

--追記終わり--

共依存にあったみぞれと希美がリズを演奏していく中で自分の想いと向き合えるようになり、自立して健全な関係を築けるようになっていく…という構造はわかりやすいし、思春期の繊細な感情をうまいこと描いていて、ザ・京アニの得意分野だな〜と感じた。ユーフォニアム劇場版の内容も少し垣間見えるので、お得感がある。
ます

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