ニトー

リズと青い鳥のニトーのレビュー・感想・評価

リズと青い鳥(2018年製作の映画)
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個人的に苦手な山田尚子の監督作なんですが、今回はかなり良かったと思う。これ、後から知ったんですけどユーフォニアムのスピンオフ的続編なんですな。まあ知らずに観たけど全然この一作で完結しているので問題ないのですが。

牛尾さんの音楽もさることながら全体的なサウンドデザインがよろしい。音楽をテーマにした作品は「ギヴン」もそうだったけど、劇伴以外でもその辺を気を遣うっていることが多いと感じる。アバンまでの編集のテンポや(ある種の激重感情矢印のミスリード含め)足音などのSE一つ一つの繊細さ、それとこれは山田尚子個人というよりは京アニの色だと思うのだけれど、キャラクターの髪の毛が良い。こういう書き方をすると問題がありそうだけれど、女性監督の場合はキャラクターの髪の毛をかなり丁寧に描くことが多い気がして、それは戯画化されたアホ毛とは違う枝毛じみた毛髪の浮き上がりなどが際立つ。

アバンの廊下を歩くだけのシーンにおける静謐な音や前述の髪の毛を筆頭とした繊細な描写だけでかなり満足。

「聲の形」や「平家物語」の共依存を前提に対象を神格化することによる贖罪は「うげぇ」と思って観ていたのだけど、「リズと青い鳥」に関してはその辺のバランスが上手く青春時代の一幕として閉じれていたと思う。

近いタイミングで観てしまった「ギヴン」が同じく音楽とその才能の差異を扱っていたのと似て、こちらも似たようなテーマを掲げながらもそこには恋慕というそのほかの事柄をすべて置き去りにしてドライブしてしまう要素がないため、ああいったドロドロ展開にはならない。

冒頭とラストの対比、違う場所を目指しつつも同じ道を歩むということの開かれ具合はグッド。

まあそもそも才能以前に楽器に対する真摯さがダンチなんですよね2人は。かたや腕時計しながら演奏、かたや大事な指を傷つけないために体育の授業に参加しないという徹底ぶり(バスケだしなぁ)

派手さはないけど編集やカメラワークの妙でしっかりとキャラクターの内面が描写されていて、深夜アニメばかり見ているとこういうちゃんとした(アニメ)映画を観るだけですごい快感が。

絵本パートはなんかこう、全体的に(まあ絵本だから当然なんだけど)戯画化されていて、素人吹き替え感も相まってどことなくジブリ臭がしてちょっと笑っちゃいましたけど。
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