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リズと青い鳥のsoraのレビュー・感想・評価

リズと青い鳥(2018年製作の映画)
4.0
放課後、校内のあちこちに高く低く太く長く響いていた吹奏楽の音色が懐かしさを伴って思い出された
ピアノを習っていた程度で当時吹奏楽には縁がなかったが、グラウンドに響いていた野球部やサッカー部の猛々しい声と音と共に、管楽器から流れてくる優しく激しく勇ましくか細く悲しい音色は、柔らかな記憶として今も私の体内のどこかにひっそりと息づいている

そしてそれらは全て高校時代の良き思い出の1ページとして、血となり肉となり今の私を形作っている

のぞみとみぞれの関係性は触れると壊れそうなほど薄く脆い硝子細工のようだ
しかもそれは常に揺らいでおり不安定でもある
人は得てして安定より不安定なものに惹かれる傾向があり、二人の女子高生の関係もその例に漏れない
そのアンバランスさから放たれる輝きは、当人たちのみならず周囲にいる者さえも巻き込んでしまうほどだった
恐らくこの揺れる輝きは十代後半という限定的な時期にのみ生まれることが多いものなのではないだろうか
そしてそれは、この先何十年の時を経ても彼女たちの心の中に暖かい灯火となって宿り続けるのだ

長い人生の内のほんのいっときだが密度の濃い時間の中に溢れた瑞々しさを、90分という映画の中に見事な技量で表現した京アニ、恐るべし!
そして感謝!
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