となりの

リズと青い鳥のとなりののレビュー・感想・評価

リズと青い鳥(2018年製作の映画)
5.0
勢いでみたが、とても素晴らしかった。

みぞれと希美の関係は共依存的であり歪であるが、互いを尊重することを学ぶことで互いの道を歩き始める。
リズと青い鳥のモチーフが交換しあい、お互いがお互いのことを思って互いにカゴを開くに至る、その過程は機微に富んでいるし、周囲の人間関係の描き方もとてもよく、TVシリーズを前提にしていないとこの説得力は出ないだろう。
つまるところ、『響け!』シリーズの2年目は、この二人の物語であったのだと得心がいったし、ダメ金であった必然性もよく理解できた。
というよりも、TVシリーズは本作の前振りだと思えるくらいに、素晴らしかった。

とはいえ、それもこれも、すべてアニメーションの良さがあってこそで、冒頭のみぞれの姿からして惚れ惚れするデザイン、色彩、作画だし、二人の歩き方で、二人の性格と距離感を演出するのも素晴らしい。し、その歩き方と足元(キービジュアルからしてそうだ!)が一貫したアニメーション的なモチーフになっているのが、とてもよい。
二人の歩みは一度だって重ならず、言ってしまえばすれ違うことすらないのだが、最後の最後、別々の道を歩きはじめ、モンタージュを通じて、はじめて歩みが揃う。
その前には、マルチスクリーンによって、二人の決意が同期させられていたが、そうではない仕方なのが重要で、二人は異なるカットにおいて、ひとつの系列をなし、そうして歩みが揃う。
映画的手法による「分離」と「接続」であり、基本的な文法だろうけど、とてもよい。

オーボエソロは、アニメーションの表現力と相まって、本当に情感が豊かで美しい。
それから、黄前・高坂のリズをみぞれが聴くときの、廊下の窓を開けるシーンは、きわめてさりげないシーンだが、空気感が伝わってくる。

青春と言われるものの普遍性に触れているような作品で、こういった作品があることにとても救われる気持ちになる。
となりの

となりの