【800円の意地と狂気と愛情】
ラーメンに何故ここまで心を引かれてしまうのだろうか?どんな日本料亭やいかなる高級レストランにもその一杯のために行列を成すことはできないのだと思ってしまう。
ラーメンはアイドルなのか?
ラーメンという偶像崇拝か?
ラーメンは宗教なのだろう…
無信教の日本人が成せる宗教趣向術の具体例の1つとしてラーメンが世に広まったのだろう。
監督自ら語るナレーションの語彙の不器用さには目をつぶるとして、濃厚で匂い沸き立つようなラーメンの偉大さとエロさは抜群に食欲を掻き立てる。
この手の自己宗教におけるドキュメンタリー表現は、対象者がいるならばその愛は狂気を伝えられれば勝ちだと思っている。クライマックスの「中華そば とみ田」の10周年イベントにカタルシスは薄味だったが、ラーメンに魅了されそれを自分の宗教にした男が語るラーメンへの愛情と息子のインタビューシーンから垣間見る狂気の一旦、そして私服の圧倒的センスにて、ラーメン一筋しかできないがそれに特化していることを目の当たりにした。
その他出てくるラーメン屋の店主の色とりどりのラーメン感に、生活という臭いや拘りという名のサイコ性、土鍋という取り残されたあの日を出汁にして濃厚に味わえた。