垂直落下式サミング

ラーメンヘッズの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ラーメンヘッズ(2017年製作の映画)
2.5
「中華蕎麦とみ田」をメインに日本のラーメン文化の本質を見据えようとするグルメドキュメンタリー。
有名店の店主たちにスポットをあてていくが、ラーメン文化のわかりやすく特異な部分しか取り上げていないし、インタビューする内容もありきたりで、どうにも網羅的で薄味な作品に感じた。ナレーションがみたまんまを言うだけなのもつまらない。
とみ田屋には行ったことはないが、こういうのはきっと苦手だ。「800円にこだわりを詰め込む」っていうのは、僕にとってはどうでもいいことで、ラーメンってそういう食べ物じゃあないでしょうと、みる前から無用の反感を持ってしまったことは謝罪しておく。
でも、やはり苦手な感じで、営業中に大将自らお客さんの前に立って丁寧な接客をしている様子が撮されていたが、この神対応が逆に無理。
僕は「頑張ってるお店」が苦手で、熱心な店員に話しかけられたりすると居心地が悪くなってしまう。
大学生のときに住んでいたところの近くに、元気なオヤジがやってるこだわりの薬膳ラーメンを出す綺麗なお店と、無愛想な老夫婦がやってる麺ダルダルの唐辛子ラーメンを出す汚いお店があったが、僕は汚店のほうが好きだった。
薬膳の店は、店主がその道ではけっこう名の通った有名店で修行をした人らしく、ご飯時には列ができていることも多かったが、入ってみると店員の接客のカジュアルさが気に食わなかったし、厨房の位置が一段高くなっている作りの店なので、カウンター席で食ってるところを見下ろされるのが気色悪くて、すぐに行かなくなってしまった。
ダルダルは、愛想はないが頑固一徹ってわけでもなくて、客が食いながらケータイいじってようが、たらたらタバコ吸ってようが、イヤホンして音楽聴いてようが、連れとバカ話してようが、大将は意に介さず仏頂面で黙々と中華鍋をふるうキタナシュラン。
接客はほとんどおばさん任せで、自分は「はいよ」と「おまち」意外は口を開かない。たまに顔馴染みが来店しても、「おおう」と挨拶をかわす程度だ。このくらいの熱量のほうが居心地がいい。
僕にとっての優良店は、こういうお店。口やかましいのも畏まったのも馴れ馴れしいのも嫌。美食・飽食の情報共有化時代においても、こういうユルい飲食店が食べログに淘汰されないでいてほしい。