SadAhCow

鍵のSadAhCowのレビュー・感想・評価

(1959年製作の映画)
5.0
2022 年 15 本目

市川崑の第一次絶頂期の代表作。市川の公私に渡るパートナーであり脚色の天才・和田夏十が脚本を務め、谷崎潤一郎の原作を大胆に改変した。冒頭の仲代達矢の気味悪いモノローグからもう目が離せず、ねっとりと妻を辱める夫(中村鴈治郎、中村玉緒の父)、妖艶にも程がある奥さん(京マチ子)、自分の「利用価値」を冷徹に見定めている娘(叶順子)、行動がまったく読めない家政婦の婆さん(北林谷栄)と、とにかくキャラが濃い。そして NTR は不滅なのである。何言ってんだって感じだけど見れば分かる。市川崑は日本的なじめじめした人情噺を何よりも嫌っていたらしく、薄汚い性欲も怨念めいた嫉妬も徹底して突き放して描いている。怒鳴り声とか一回も出ないのに怖いんですわ。最近の邦画は「強い感情=叫ぶか泣くか」一辺倒の描き方でげんなりするのだが、こんな映画が作られて大ヒットしていた時代もあったのか……。70 年前の日本の方が映画リテラシー高かったんじゃないかな? 
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