アズマロルヴァケル

ハングマンズ・ノットのアズマロルヴァケルのレビュー・感想・評価

ハングマンズ・ノット(2017年製作の映画)
3.6
とち狂いすぎてる映画

・感想

観た感想としてはとにかくヤバイ!ヤバイ以上の何物でもない映画!突っ込みどころがあったり状況説明がうまく説明されていなかったりで上手く飲み込めない部分が多くはあったんだけど、残酷描写をこれでもかと低予算なりに頑張っていてここまで人間の価値や尊厳、道徳を無視した映画は久しぶりに観賞しました。

これといったドラマ性や心理描写というのはないんだけど、全編狂っててヤバイ。情け容赦のない描写が多く、登場人物の殆どがまともじゃない。かといって救いがあるような結末を登場人物に与えてくれないので良くも悪くも凄い。

なかでも一番エグかったのは影山アキラ(弟)が車で下校中の女子高生を拉致、そして後輩のタカ坊の家のガレージで強姦・監禁する下りは観てて胸糞が悪いです。まるで、実在の事件を参考にでもしてるんじゃないかと思ってもおかしくないほどリアルで、物語が進むにつれて女子高生の変化が画的に描かれていたのが生々しいです。

あと、影山兄弟やその子分にガレージを提供していたタカ坊がガレージに父親が来てしまったことをきっかけに影山シノブ(兄)らに促されて金属バットで自分の父親を殺す様はあまりにも不条理で最悪。あのシーンはもっとカット割りを考えてても良かったかなぁと個人的には思うんだけど、あのシーンのあと、タカ坊が良心を捨てて影山兄弟の仲間になっていくところがもっと怖いのかも。

ただ、87分という短い時間で上手くできてるようには見えるものの、どうしても展開が不自然なところがあったり要らない演出があったりと改善してほしかったところが多かったのが否めませんでした。

いくつか例を挙げると、中盤に登場する影山兄弟の仲間、後醍醐親子の登場シーンが殺人鬼の柴田や影山兄弟と違ってデカデカと字幕を使って紹介するのですが、そのシーンがあまり深い意味が感じられずどういう人物かが非常に伝わりづらかったです。

あと、後半で影山兄弟が京都タワーを爆破させたとみられるカップルのビデオカメラの映像が挿入されていたものの、一体どうやって影山兄弟が京都タワーを爆破させたのか、或いは別の誰かがやったのかを分かりやすく描いてほしかったです。

何よりも最大の汚点なのは、主要人物のキャラクター描写があまり描ききっていなかった点と思いました。主人公である柴田の鬼畜具合やリアルな陰キャぶりは描けているとして、最低でも影山兄弟は兄のシノブよりも弟のアキラのほうが見せ場が多かったので、もうちょっと兄のシノブが狂ってるところを見せても良かったと思った。

他にもラストで警備員や教員を無視して影山兄弟が大学に侵入できるのだろうかとか、陰キャの柴田が同級生の野口を殴り殺せることができるものなのかとか、影山兄弟や柴田の身のまわりに警察が来なかったのだろうかと色々と言いたくなるんだけど、ただ単純に面白いし、何度観ても個人的に面白いと感じさせてしまうのは自分でも不思議である。

多分だけど、インディーズ映画をあんまり観てない人はこれを観て「これこそがインディーズ映画なんだ。」と理解できるはず。