ジェイコブ

予兆 散歩する侵略者 劇場版のジェイコブのレビュー・感想・評価

3.6
看護師の夫と二人で暮らす山際悦子。ある日、後輩のみゆきから「家に幽霊がいる」と相談を受けるも、それは紛れもない彼女の父親だった。心療内科医に見せた所、彼女から「家族」の概念が無くなったと聞かされる。何のことか分からなず戸惑う悦子の前に、夫の同僚である真壁が現れる。一方、世界各地では、みゆきと同じように「概念」を失う原因不明の症例が相次いで報告されていた……。
黒沢清監督作品で、WOWOWドラマのスピンオフ作品。宇宙人による侵略を描くSFではあるものの、小さな違和感から始まり、やがて静かに崩れ去っていく日常は、カウフマン監督の「ボディ・スナッチャー」を彷彿とさせる。悦子の夫山際を演じる染谷将太がとにかく情けないが、その情けなさが人間らしさでもある。人間の持つそんな弱さが「侵略者」にとって付け入る隙となったのが本作の面白い点である。
当たり前にあると思われがちたが、脆く不確かな平穏な日々を通して、人間らしさとは何か? 全てを失った後に人類に残される物は何か? を問いかけるSFというよりは、ヒューマンサスペンスといえる作品。