鰹よろし

U.M.A 2010の鰹よろしのレビュー・感想・評価

U.M.A 2010(2009年製作の映画)
2.5
 取り壊しの決まった古めかしい教会の地下で、ハンマーを振り回し壁を破壊する2人の作業員。図面に無い場所を見つけるやズケズケと侵入し、無作法に物色を始める...南無。

 その教会は聖ジャン・アンドレ教会といい、建築学史を塗り替える歴史的価値のあるモノが大量に眠っていた。何度も建て直しが行われている様で、その過程で余所から持ち込まれた物品や、書き換えられている壁画があるという...

 そんな歴史的大発見に建築学史を専門に研究するジャックは血沸き肉躍る。彼は建造物に見られるガーゴイルやハンキーパンク、シーラ・ナ・ギグといった彫刻には実在のモデルが存在し、神話は事実に基づく記録の改変であると力説する男である。

 しかし彼の研究分野は現代建築から消えゆくモノであり、それ故か研究価値を認めてもらえず収入は激減、それに伴い妻子にも去られてしまった。頼みの綱である出版社からも原稿(論文?)に烙印を押され、もっとある事無い事面白おかしく書き立てろと言われる始末。受け持つ講義も受講生徒が少なく、また皆一様に興味関心無く退屈そう...

 新旧の建造物が混在する(隔てられた?)街並みを背景に綴ることでの、歴史が軽んじられ歴史文化遺産が失われゆく時代の流れに想いを馳せさせる導入は見事。

 またメインとなる、教会の無断調査後に見舞われる不可思議な現象や連続殺人事件の解明において、万人に正確に事実を伝えられるはずの、決定的な証拠となるはずのカメラの写真やビデオカメラによる映像の機能と無能を描き出すことで、尺稼ぎは十二分に、記録と記憶の兼ね合いや、その事実に対する無理解及び曲解を据え、歴史の伝聞の危うさを暗示し、埋もれていく歴史(事実)に目を向けさせようとする気概が何より素晴らしい。

 しかし、とある事実に対しアプローチするモノが全て同一言語が通じる者のみになってしまっているところは少し気になる。

 犬の散歩を描いているのだからガーゴイルに殺害されるのは人間のみで、人間の理解できる言葉を発せない犬が目撃者として取り残されている、と観せていたらまた一味違うものになっていたのではないか...

 また、記録というところをある意味では無形の「テープ」または「データ」に一本化しており、決して作品内でブレが生じているわけではないのだが、その場所に建造され守られてきた事に意味がある教会をドッカ~ンと無に帰すラストはもう少し何か配慮があっても...あった方が良かっただろう。


「プレデター2」(1990)...「ジュラシック・パークⅢ」(2001)...「サラマンダー」(2002)...「チュパカブラ」(2003)...「アローン・イン・ザ・ダーク」(2005)...「地獄の変異」(2005)...「スリ」(2008)...「イグジスツ 遭遇」(2014)...「古都」(2016)...「グレースフィールド・インシデント」(2017)...
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