自らの力で地域を再生するための様々な取り組みを紹介したドキュメンタリー。原発事故後に福島県の酒蔵の当主が立ち上げた会津電力、放射能汚染によって居住制限区域となった飯舘村で畜産農家が立ち上げた飯舘電力、集落の存続のために100世帯全戸が出資した岐阜県郡上市・石徹白の小水力事業など。この年になると見ていて羨ましい。
個々に独立し、近隣との交流もほとんどなく気は楽な半面、孤独な「都会暮らし」。人間関係が濃密で鬱陶しいこともあるけれど、皆が協力して生活する「田舎暮らし」。若いうちは気楽さが勝るけれど、年をとってくると人恋しさが強くなる。
さらに羨ましいのは、田舎暮らしの方がお金の影響の少ない生活を営める余地がありそうなこと。農家でなくても自ら畑を耕し、農作物をつくる。近所の人たちで作ったものを交換したり、仕事を協力したり。
日々の出費にストレスをため、老後の生活に不安を抱く自分にとって、お金に依存しない生活の道があり、金銭的なリスクが相対的に小さそうな田舎の生活は、心の平安という意味で羨ましい。
利便性、快適性よりも、生きるために体を動かすことを選ぶ。きついけれど、そこにあるのは生きているという実感。これって、得難いものなのではないかとも思う。
本作で紹介されているような地方の取り組みが何故“革命”なのかといえば、制度疲労を起こしてきている今の中央集権体制の変革を進めることにつながるからだろう。
経済が成長過程にある場合、中央で意思決定し、資源を配分するやり方が効率的だった。しかし、経済の成熟で価値観が多様化し、中央集権的な資源配分のデメリットが目立つようになってきた。
物質的に満ち足りて、快適に生活できても、何かと不安で「幸せ」の実感は乏しい。ムダが多くなり環境への負荷も強くなってきた。今の子どもたちが、超満員の電車で往復2時間以上の時間をかけて出勤し、仕事でストレスを溜め込んで家で不機嫌なお父さん(私)のように、自分もなりたいと思うだろうか。
個人的には本作で紹介されているような取り組みは、単発的なものではなく、これからの趨勢ではないかという気がしている。
話は変わるけれど、本作を見ている間、自分が思ったことは、こうした地域で映画館をやろうという人がでてこないかなあということ。
渋谷アップリンクの浅井隆代表のインタビュー記事によれば、不動産や椅子などを含めず、アップリンクのような“マイクロミニシアター”サイズ、1スクリーン分の機材は800万円程度だという。
素材もデジタルで、1日に様々な映画が上映できるから、日本全国どんな地域でもシネコンに負けないスペックで話題の映画を提供する映画館を比較的簡単に作ることができる。
(http://realsound.jp/movie/2017/06/post-86913.html)
コミュニティに根差した映画館なら地域の人の交流の場となりそうだし、観たい映画や発声上映とかを要望したらすぐ実現しそう。ちょっと想像するとイイ感じなんだよね。
もちろん甘くはないと思うけれど、本気でやろうと思ったら実現できそうな気がする。そしてそんな映画館のある地域なら、住んでみたい気がする。
●物語(50%×4.0):2.00
・羨ましいと思いながら観た。
●演技、演出(30%×3.5):1.05
・説明がちょっと多めかな。
●画、音、音楽(20%×3.0):0.60
・普通に良く撮れているのではないかと。