Jeffrey

バナナ・パラダイスのJeffreyのレビュー・感想・評価

バナナ・パラダイス(1989年製作の映画)
3.8
「バナナ・パラダイス」

本作は台湾巨匠傑作選 二〇二〇で、去年劇場公開され、劇場に行こうとしたが、武漢肺炎の関係上なかなか行けずに、ソフト化するまで我慢して、ようやくDVDも発売され、配信やレンタルもされないと言うことで購入して初鑑賞したが傑作だった。もともと台湾映画は大好きだが、正直HDリマスターにもかかわらずBDで発売されないのが本当に辛い。とゆうか「村と爆弾」と「無言の丘」も発売してほしいと言うのは私だけだろうか。本作は台湾ニューシネマの名匠とされるワン・トン監督が、大陸から台湾へと渡った男の数奇な人生を通して戦後台湾史を描いたドラマで、歴史に翻弄されながら、他人になりすまし戦後台湾を生き抜く男の数奇な運命の名画である。

さて、物語は一九四九年。寒く荒涼とした中国華北で暮らす青年メンシュアンは、幼なじみのダーションを頼って国共内戦中の国民党軍に潜り込み、バナナがたわわに実る南国台湾にやって来る。ところが2人はそこでスパイ容疑をかけられ、メンシュアンは命からがら部隊を逃げ出す。その途中、ある男の臨終に出くわしたメンシュアンは、その妻ユエシャンから彼女の夫になりすまして仕事に就くことを持ちかけられるが…と簡単に説明するとこんな感じで、一九八九年年、候孝賢が「悲情城市」を発表した年ワン・トン監督は、ホウ監督とはまた別の視点から、戦後台湾の混沌とした時代をくぐり抜けてきた人々の姿を描き出した。それが「バナナパラダイス」である。自身のアイデンティティーを捨て、中国から台湾へと渡り、他人になりすましながら激動の時代を生き抜く男の数奇な運命に、台湾の歴史のうねりが重なる。主役のメンシュアンを演じるのは「風櫃の少年」のニウ・チェンザーで、去年映画紹介するYouTubeで候孝賢映画特集で紹介しているので気になった方は覗いてみてください。その彼は後に監督作品で「モンガに散る」と言う映画を作り、大ヒットを収めている。
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