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天命の城のバナバナのレビュー・感想・評価

天命の城(2017年製作の映画)
3.0
なにぶん朝鮮の歴史の話なので、背景がよく分からず、映画を観終わった後はウィキで勉強しました。

時代は中国が明から清に変わろうとしていた1636年。
中国でブイブイ言わせていた後金(後の清)は、朝鮮半島にも攻めてきた。
この作品では、不意を衝かれた朝鮮王朝が南漢山城に、既に後金軍に取り囲まれて孤立しているところから始まっています。
という事で、最初から負け戦が濃厚なので、冒頭から最後まで、常に沈鬱な雰囲気でした。

李氏朝鮮の軍事大臣、初代は凄い人だったのかもしれないけど、
その末裔は、所詮王宮から外に出た事が無い、世相をまるで知らない爺さんが軍事の指揮をとっているので、どんどん自体が悪化していく。
こいつのせいで有能な武将が殺されたり、ロクな事がない。
だいたい「民がまだ戦えます」という奴に限って、自分が前線に行く気はまるで無いんだよね。
こいつをさっさと左遷させなかった王様も罪は重いと思う。

この王様はそれ程バカっぽくはなさそうだったが、この軍事大臣と同じく王宮から出た事がない人らしく、
「兵士より馬の方が大事」と言うこのバカ大臣の進言を受けてしまったり、世の中の事を知らないせいで、結局まともな判断ができず、そのせいで多くの善良な人間が死んでいくのだった。
まあ、この辺は、日本だって太平洋戦争で大本営の意見通りに国民が捨て駒になって、300万人も死んだのだから、朝鮮の事は言えないけどね。

それにしても『王になった男』といい、朝鮮王朝の大臣たちは「なりませぬ、王様」と、みんなで大合唱すれば、王様に対して反対意見を押し付けられるんですね。
1体20くらいで、声を揃えて大声で反対されると、やっぱり王様でもビビるやろうしね。

映画の中では、和平派のイ・ビョンホンの大臣と、主戦派の大臣が最後には意見が対立するんだけど、
王様の周りで、己の保身ではなく国の為に意見を言ってるのは唯一この二人だけで、それぞれ悪い人ではない、という人間性を映画では見せています。

それに、頭下げるのが遅過ぎる。そのくせ民の命より、自分の保身が大事なんやな。
それなら、例えば日本では伊達政宗が小田原責めにわざと遅刻した時に、張り付け用の十字架を自分で背負った死に装束姿で、豊臣秀吉の前にわざと参上するというパフォーマンスをやってのけたが、
朝鮮の王様もそれくらいやって、後金の王様をアッと言わせてやればよかったのに!って思っちゃったよ。

李氏朝鮮は、この時から清への隷属が始まり、ようやく解き放たれたのは、日本が日清戦争で勝って1895年の下関条約の時に、日本が朝鮮を独立国として清に認めさせた、250年後の事だったとか。
それなのにどうして日本って、こんなに韓国にいつまでも恨まれるのでしょうか。
日韓併合だって、伊藤博文が安重根に殺されなかったら、10年間という期間限定だったのにね。

南漢山城で重臣たちの意見に振り回されている王様の姿は、
今の国民の意見でコロコロ変わる韓国の政治の姿と重なってるわ…、
と思った作品でした。
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