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恋とボルバキアのeiganoTOKOのネタバレレビュー・内容・結末

恋とボルバキア(2017年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

今の時代「自分らしく生きる」というのは当然ポジティブなスローガンとして掲げられ、みなが共有し、そうそうそれ!と頷く。この映画の鋭いキャッチコピー「みんな違って、みんないいってみんな言う。」の世界に生きている。

勿論、上記のような目標は文字通り「全員」が平等な権利と、権利を行使できる偏見がない社会ならほとんどの人が可能だろうし、夢や愛を考える余裕がある「正しい」社会だろう。
当然LGBTの運動がスローガンに採用することもあると思う。

この映画の出演者はトランスジェンダー、クィア、アセクシャルを窺わせ「自由に生きていいんだよ」と社会に言われても戸惑う人ばかり。
異性愛しか結婚は許されなかったり、面接で落とされたり、性自認がはっきりしていないからと自分を責めることになったり。
世間や広告が自由になりなさい、と押し付けたところで、その枠にはまらない人がいる。どの世界にも存在する。
わからないことを、わからないままにしても良いって社会になれば、悩みが少しでも減るのかもしれない。

この映画の素晴らしいところは「わからないことってある」という曖昧さを、4年間拾い続け、ハッキリとした輪郭を見せないところだ。
世間が性自認の曖昧さを許さない原因の一つとして、知らないだけ、の可能性もある。だからこそ、この映画は絶対に見るべきなのです!!!

小野さやか監督、批評性の高さ、問いかけさせるストーリー構成力、ドキュメンタリーでは相当大事な出演者との愛のむすびかた、どれを取っても才能がズバ抜けてます!
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