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マスカレード・ホテルのFu11sのレビュー・感想・評価

マスカレード・ホテル(2019年製作の映画)
3.7
生瀬さんのくだりは長過ぎかつ演出がくどくて作品の質を下げているように思う。ここはマイナス。少し勿体ない。(演技は流石というべきですが、、、)

1つ1つのエピソード(この作品に関しては1人1人の『お客様』)が本質の事件を紐解いていくためのヒントとして、そして主役2人の関係性を描いていくために重要な役割を持つ。
事件の真相についてだが、見ている側にもなんとか分かるように展開していってくれるのだが、もう少し端的に描いた方が理解しやすい作りになっていたかも。
正直「なんとなく」でしか理解出来ない自分がいたのは悔しい。まるで登場人物がみんなきれ者ばかりになっているようで少し現実味がなかった。(結果として、見る人の理解力の差を感じさせてしまっているのは残念)

キムタクと長澤まさみの視点・思考の違いや、仕事に対する信念の違いについて描くことによって人間と接する空間の恐ろしさと相対する美しさを感じることが出来た。おそらくココが本作の肝であり、役者の力・演出の力をしっかりと受け取ることが出来た。充分劇場で鑑賞するだけの価値があると思う。

とにかくキャストが豪華。どの役者も人間性が嫌なくらい滲み出ている演技を見せてくれるので《ホテル》という舞台が際立っていた。欲を言えば、ホテルの内側から外観へと出ていくカメラワークに工夫が欲しかった。(それによって)ドアからフロントへの始まりの展開の繰り返しが多過ぎるので、ここは苦しくも感じられた。映画というよりTVドラマみたいで安っぽくなってしまった。

物語終盤で明らかになる、犯人役のあの人の演出は、この作品全体に対する「凄み」を感じた。キャスティングも見事でしたが、やはり上手い役者さんだなぁと改めて感じた。(東宝さんもニクいことをする)


音楽や衣装、ホテルマンの佇まいなど徹底して作りこまれているなぁと、日本映画の「今」の本気を感じることが出来ました。

エンドロールにて出てくる絵画が作風を更に良いモノへと昇華させていました。最後の最後まで楽しませようとする製作陣のサービスが伝わって来た。
2019年の邦画は本作が評価の基準になるのではないか?と思えるくらい作り込まれ、考え抜かれていると感じます。
気になる点もいくつもありますが、こういう映画を劇場で見れたのは幸せなのでしょう。

終盤で見せる長澤まさみさんの笑顔、素晴らしかった。また見たくなる1本です。
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