K助

マスカレード・ホテルのK助のレビュー・感想・評価

マスカレード・ホテル(2019年製作の映画)
3.2
同一犯によると思われる連続殺人事件が発生。現場では、次の殺人現場を予告する、緯度・軽度を記したメモが発見されていた。三人目の犠牲者の元に残されていたメモが示す次の殺人現場は、一流ホテル。警察は捜査班をホテルへ派遣し、予告殺人を防ぐべく潜入調査を開始するのだが…。

フジテレビによる、キムタク主演のミステリー映画。それなりに話題になっていたので、「うっしゃ、観に行くか」という事で行ってきました。
フジテレビの作る映画なだけあって、画面のあちこちに馴染みのある顔が、チョイ役で出てきます。正直、ウザい(笑)。自分はほとんどテレビを見ないので芸能人には疎いのですが、それでも何となく見知った顔が、役の軽重関係なく画面にチョロチョロ出て来ますと、そちらが気になって映画への集中力が削がれてしまうのです。バラエティ番組的と言いましょうか。「さすがフジテレビ。志が低い」とゲンナリ。

が、それを補って余りあるのが、木村拓哉。彼の演技が嫌いな人には耐え難いでしょうが、作品が始まった時に生じる彼への違和感と、物語が進むにつれて木村拓哉無しでは成立しなくなるその存在感。岡田准一と並び、自分的には「ハズレなし」な役者です。

映画としては、取り立てて良い(「目立つ」と言い換えても構わないかも)ところがあるものではありません(ぇ?)。
でも、だからと言って詰まらない訳ではありませんよ。
はみ出し者だが有能な刑事という存在が、潜入捜査で折り目正しいホテルのフロントマンとして働かねばならなくなるコミカルさ、「客に寄り添う事が仕事のホテル従業員」と「人を疑う事が仕事の警察関係者」というギャップ、「ホテルの指導員」と「現場叩き上げの老練な所轄の刑事」という、これまた異質な二人との、二重存在的なバディ感。
ここに、ホテル特有の「背景が違う雑多な人が生む人間ドラマ」と「予告殺人を防ぐサスペンス」が混ざり合うと、なかなか興味深い作品世界が登場する事に。

はっきり言って、ミステリーとしての構造は粗雑だと思います。その構造は納得のいくものではなく、「粘着気質の犯人怖い」としか表現しようのない、全てを犯人の精神性に求めるオチはどうしたものか、と。
それでも、真面目で他人に対して誠実なホテルのフロントマンである長澤まさみと、切れ者で他人を疑う事が仕事の木村拓哉、そしてそんなキムタクを包み込むベテラン刑事の小日向文世。この三人の物語における立ち位置と演技が素晴らしく、「映画館で観る必要はない作品だよね」というツッコミを入れつつも、それなりには評価している私でした。
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