[] 60点
リューベン・オストルンドの長編デビュー作。現実の都市(Göteborg)と酷似した架空の都市イェーテボリ(Jöteborg)を舞台に、人々の不思議な行動を様々な映像で見つめる一作。監視カメラのようなフィックス見下ろし角度でマンション屋上のアンテナを雑に直す女を映したり、隣人のドアスコープから覗いたような広角で"これが最後だ!"と言いながら玄関ドアの鍵を開けたり閉めたりする女を映したり、オーブンの中から酔っ払って自分の頭を瓶で叩く男たちを映したり、"ジークハイル!"をひたすら練習するホッケグループの少年たちを『Goshogaoka』みたいな体育館長回しで映したり…と脈絡なく連なっていく。オーブンの端、開いたり閉じたりする自動ドア、トラムの連結部の窓などフレーム内フレームを使った世界の切り分けが興味深い。オーブンの中から撮る映像とか、多分ARuFa以来だわ。そのうちに、少年ストリートミュージシャン、顔面モザイクの男、玄関開閉の女、問答をする若いカップルなど再登場する人物も現れ始め、物語は珍獣博覧会から彼らの観察に駒を進める。『フレンチアルプスで起きたこと』『ザ・スクエア』みたいな最近の作品に比べると、まだコミカルさの中に温かみがあるように思え、期待したオストルンド感がないのは新鮮だった。特にラストのロイ・アンダーソン感…良い。