空海花

アンダーグラウンド 完全版の空海花のレビュー・感想・評価

5.0
誕生日記念レビューは二年越しでエミール・クストリッツァに捧ぐ💐
(通常版は昨年誕生日レビュー済)


カンヌ国際映画祭パルムドールに輝いた大作に2時間半近い映像を追加して再編集した完全版。
日本では劇場公開されたが、テレビ放映用に製作された6エピソードから成り、
エピソード1~3を前編、エピソード4~6を後編とする二部構成となっている。
旧ユーゴスラビアの50年にわたる悲劇の歴史をブラックに、けたたましく、ファンタジックに描いた映像叙事詩巨編。
圧倒の314分。
時間の都合で一気見とはいかず、エピソード⑤までを1日目として二日がかりで鑑賞。

こんなに完璧な完全版は他にないかもしれない。
本編が見事に補完、深掘りされて、わかりやすくなっているし
自分の中で完結し満たされる思い。
放映された国では、TVでこんな芸術性の高い映像が観られるなんて、何て恵まれているんだろう。
あの駆け足のジプシー・ブラスの音楽に歓喜し、また酔い痴れる。
動物たちのカットはいつも何度でも見入ってしまう。

よりわかりやすくなるのはヒロイン・ナタリアについてよく明かされるところではないだろうか。
ナタリアとマルコ、ナタリアとクロの関係はよりいっそうハッキリとして
突然いなくなる弟のバタについてもドラマがあった。
もっと気まぐれに見えていた彼女の苦悩や心の移り変わりがよくわかる。
マルコの悪事もよりいっそう。

エピソード別に書いてみると…

episode①
1941年。
共産党員のマルコとクロは武器を密売していた。
舞台女優ナタリアはナチスの将校を利用しようとしている。
マルコはドイツから逃れた人々を地下室へ避難させる体で、武器を製造させる。
ファシストがオリーブオイルですってんころりん(笑)
クロの息子ヨヴァンも誕生。


クロとナタリアの結婚式。が!
クロはドイツ兵に捕まって、拷問を受ける。電気椅子⚡
マルコは医師に扮して救出作戦。
tick-tack,tick-tack…
手榴弾爆発。ちょっとドリフみたいと思った(笑)
考えると色々そういうところあるなと再発見🤭


1961年。
チンパンジーなのにソニはバナナをずっと食べてない!🙊
のでバナナをあげよう🍌
そしてあの映画撮影。そっくりさん。


ナタリアの弟バタが…
回転するベッドと窓の外の親犬と仔犬の対比カットに唸る。
ナタリアの苦悩。
真実はどこに?肉体の中に。


ヨヴァンの結婚式は宴もたけなわ。
サルが戦車に!そして!


1991年。リアルにユーゴは内戦中。
あの衝撃のラストへ…
この物語に終わりはない
「許そう。でも忘れないぞ」

最後の島をかたどっているものは…

クストリッツァの芸術と人生の最高の表現力をたっぷりと味わってほしい。


2021レビュー#195
2021鑑賞No.434


現在生涯ベスト2『アンダーグラウンド』
完全版のエネルギーも物凄い!
このエネルギーで今年を無事に乗りこえたい😆
また一つ歳を重ねましたが、
これからもどうぞよろしくお願いします⭐
いつもありがとうございます❤


Memo:
クストリッツァ。影響を受けているのは
フェリーニ、タルコフスキー、ルビッチ
ブニュエルetc.
ボルヘスの文学的手法も。
空海花

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