いののん

アンダーグラウンド 完全版のいののんのレビュー・感想・評価

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「昔、あるところに国があった」


第二次世界大戦からユーゴ内戦まで、激動のユーゴスラビア。この映画では、史実にファンタジーや御伽話や神話や大河ドラマを交えて、「あるところにあった国」に生きるものたちを描き切る。ニンゲンを描き切る作品は、他にも沢山あると思うのだけれど、ニンゲンだけじゃなく、生きとし生けるものを、ごった返して描き切ったところが、めっちゃ凄いと私は思う。


エミール・クストリッツァ監督作品を観るのは初めて。
1995年製作ということは、ボスニア紛争の最中に撮っていたということで、そのことにも驚く。「祖国はユーゴスラビア」、という監督の決意と覚悟は、どれほどのものだったのか、想像してもしきれないほどだ。


悲劇は喜劇
喜劇は悲劇
音楽がさらにもり立てる。あの音楽をこれからどこかで耳にすることがあったら、私はダッシュして駆け寄って、握手しに行っちゃうと思う。そして、ブレーメンの音楽隊のこどもたちみたいに、ついてっちゃうと思う。


悲劇と喜劇の果てに。
ユートピアなんて何処にもない。ここではないどこかなんてないし、あなたではないだれかなんていない。ユートピアを探すくらいなら、今、ここで足掻くしかない。そう思って私はここまで生きてきた。


でも、悲劇と喜劇の果てに、あんな涅槃のような世界が訪れるのだとしたら、生きるのも死ぬのも受け入れられる気がする。探さなくたって、ある。悲劇と喜劇の果てに、ユートピアはただそこにあるのだと、そう言ってもらえた気がする。お釈迦様の入滅の際には、生きとし生けるものが集まってきたように。


だから、この物語に終わりはない。


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*スコアつけるのは2度目に観たときにします。とりあえず、チンパンジーのソニには、迷わず5億点!いや、進化の過程分全てを捧げてもいい。ホモ・サピエンスはこれから、チンパンジーのソニの方に向かったらいい。お利口すぎで、可愛らしすぎ!
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