こうみ大夫

さくらになるのこうみ大夫のレビュー・感想・評価

さくらになる(2017年製作の映画)
4.4
回想力の高さ。あの回想における「大丈夫」は何よりも狂ってる「大丈夫」なんだけど、何よりも暖かい「大丈夫」なんだなぁ。ひょろ木一本にあれだけの意味を込められるとは。
そしてラスト、特に素晴らしいのが二人歩く桜並木の引き画。音楽と相まって北野映画のようだった。
この感覚は介護の問題に直面する感情と似てるかもしれない。我々はただ死へと進んで行く(いやむしろ幼子に戻っているかもしれない)相手を、可哀想に思いながら、もしかしてこれはただ美しい何かなのではと気づき出す。これは世間や差別、普遍性の中で見えなくなってしまう、あの感情だ。3.11もそうであったし、野生動物の理想郷となったチェルノブイリもまた然り。私たちが切り離そうとする何かに素晴らしい価値があるということを「桜」によって象徴するテーマが見事だった。
関係ないかも知れないが監督はこの作品で「食」を一貫して日常の象徴として描く。その為食事は引き画で撮られ、「食事をする人間たち」としてのイメージ、特に俳優たちの動きが頭に残る。何となく、何故私たちは毎日食べるのだろうか、などと考えてしまった。関係無さそうだが、桜を結果的に食べるので何かしら関係しそうな気もする…。
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