うにたべたい

ウルトラ6兄弟vs怪獣軍団のうにたべたいのレビュー・感想・評価

ウルトラ6兄弟vs怪獣軍団(1974年製作の映画)
3.4
一時期、ニコニコ動画で白い京劇のような仮面をかぶった怪物が、ウルトラマン兄弟と一緒にゴモラをリンチする動画が流行りました。
ウルトラ兄弟が這いつくばるゴモラを囲んで暴行を加えた上、白い怪物がスキップのような足取りで現れて、戦意喪失しているゴモラを真っ二つにするというひどい映像なのですが、その元ネタとして有名な作品ですね。

本作は、同人作品や海外のパクリなどではなく、円谷プロがタイの制作会社と共同作成した、れっきとした商業作品です。
仏像の盗賊に殺されたタイの少年「コ・チャン」を救うため、1万年以上前に地球の平和を守り戦った伝説の戦士『ハヌマーン』の魂がコ・チャンに入り込む。
悪党を懲らしめるが、その後タイの地下から怪獣軍団が現れ、地球の平和を守るため、ウルトラマンたちと戦うという展開となってます。

ハヌマーンはオリジナルではなく、一説では孫悟空のモデルとなったともいわれているインド神話の神です。
インドで崇拝された神の化身であり、作中でも、一部ハヌマーンの伝説が映像化されています。
ハヌマーンとラクサナのくだりは本編と無関係なので、ハヌマーンという神の紹介として入れたものだろうなと思います。
パッケージではウルトラマンがメインのようですが、実際はハヌマーンがメインで、ハヌマーンという神でありヒーローを伝える教養的な面も感じました。

ただ、内容はとても教育に良くない感じです。
開幕早々、仏像泥棒にコ・チャンは殺されるのですが、至近距離から発砲され、血まみれのコ・チャンが絶叫するというショッキングな殺され方をします。
死んだ主人公を救うため、命を分け与えるというのはウルトラマンではおなじみの展開なのですが、これがすごい、天から巨大なウルトラの母の手が伸びて、悲しむ人々の目の間でコ・チャンの亡骸をつかんで持っていきます。
こうしてみるとウルトラの母やウルトラ兄弟も、巨大な仏のような存在に見えてきますね。
晴れてコ・チャンはよみがえり、ハヌマーンへの変身能力を得るのですが、早速、自分を殺した泥棒へ復讐します。
「仏様を大切にしろ!大切にしないやつは死ぬべきなんだ!」 などと物騒なことを叫びながら泥棒たちを追い詰める様はもはやパニックムービー。
どこか楽しげなのも狂気を感じます。いやあ悪いことはできないですね。

特撮はしっかりしていて、(時々街並みが日本になりますが)大量のロケット基地で怪獣が暴れまわるシーンなどは迫力がありました。
怪獣も、ゴモラ、タイラント、アストロモンス、ミラーマンからゲストとしてダストパン、そしてドロボンが現れます。
ドロボンだけなんか毛色が違わないか、と頭をよぎりますが、ウルトラ怪獣でも安定したデザインの怪獣たちが続々登場し街を破壊する場面はよかったです。
ただ、ゴモラのリンチもそうですが、ゴモラ以外の怪獣を退治するシーンも結構酷く、特にドロボンを倒すシーンはほとんどハッピーツリーフレンズです。

トンデモ展開が続くこともあって最後まで楽しく見れました。
なんだかんだでストーリーも悪くなく、ハヌマーンの伝説が語られる部分も興味深かったです。
なお、ウルトラ兄弟はほとんど出番ないです。
そのため、ウルトラマンシリーズは視聴していなくても、設定だけ知っていれば楽しめると思います。